病床増、見えぬ出口 県医療構想きょう会議


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 県は団塊の世代が75歳以上となる2025年の医療提供体制を定める地域医療構想の策定作業を進めている。25年の病床数を推計しているが、県の検討会議が出した推計値に対し、県医師会と各地区医師会が見直しを求め、どれだけ増やすかという入り口論議が4カ月近く続いている。県は28日の検討会議でこの問題について議論する。

 病床数は現在の医療需要と人口予測などから25年の数値を推計し、病床稼働率で割り戻し算出する。国の指針では高度急性期の稼働率を75%、急性期は78%と設定。この数値を使うと本島中南部で一般病床を1946床増やすことになる。
 一方、県は現在の県内の病床稼働率が95%を超えていることから「調整病床数」という概念を用い、推計に使う病床稼働率を85%と設定した。その場合は1114の増床となる。
 だが医師会は「県内病床稼働率の高さは医療機関の自助努力によるもの」「25年まで人口が増えると推定される中、現在の稼働率で算定することは医療機関の逼迫(ひっぱく)した状況の改善につながらない」と指摘。国の指針通りの稼働率での算定を求める。
 中田安彦中部地区医師会長は予定入院がしづらい地区の現状や、県の目標人口が推計人口より多いことを挙げ大幅増床を要望。「どこをどう増やすのかは圏域会議での話し合いや医療審議会の承認が必要だ。必ず1946床増やすわけでも一気に増やすわけでもない」と病床数を多めに推計しても問題ないとする。
 県地域医療構想検討会議の委員も務める県立中部病院地域ケア科の高山義浩医師は「中南部の医療需要の増大は間違いなく、将来を見据えた増床が必要」とした上で、国の推計通りの1946床の増床とした場合、次の3点を懸念する。
 (1)全国の医療従事者が不足する中、確保見通しがないままの増床では医療現場が疲弊する(2)中南部の増床に伴う北部や離島からの医療従事者の流出、地域医療バランス崩壊の危険性(3)病床数推計で稼働率を低めに設定しても病院経営のために空床を埋めようとするケースも予想され、その場合、入院期間が延びたり安易に入院させられて高齢者の医療依存度が高まる―の三つだ。
 一方、県保健医療部の国吉秀樹保健衛生統括監は「地域の意見を聞き進めていきたい」と話している。
(玉城江梨子)