「食料買えず」43% ひとり親、深刻さ鮮明


この記事を書いた人 田盛 良一

 経済的な理由で過去1年間、必要な食料を買えないことがあった県内の子育て世帯は、ひとり親世帯で43%、両親がいる世帯でも25%に上っていることが、県が29日に公表した子どもの貧困実態調査結果で明らかになった。命を支える食事さえも十分に買うことができていない沖縄の子どもの貧困の深刻さが浮き彫りになった。県内8市町村のデータを活用して県がまとめた県内の子どもの貧困率は全国(16・3%)を大きく上回る29・9%と算出された。自治体が都道府県別に貧困率の数値を出すのは全国で初めて。県と研究チーム(統括相談役研究者=加藤彰彦・沖縄大学名誉教授)などが29日、県庁で中間報告として発表した。結果の一部は県が作成している子どもの貧困対策推進計画に反映される。

 調査は子どもや保護者の生活実態把握を目的に、県教育委員会や市町村の協力を得て県子ども総合研究所(龍野愛所長)が実施した。県内全域から抽出した公立小学校の1、5年生、中学校の2年生と児童・生徒と保護者が対象。2015年10~11月、子どもの暮らしや精神状況、保護者の就労や家計、子育ての負担などをアンケートした。子どもの貧困率は、市町村から提供された収入や社会保障給付のデータから算出した。
 保護者に聞いた調査では、厚労省の相対的貧困基準(等価可処分所得122万円)未満の貧困層のうち、小1では57%が就学援助を利用しておらず、厳しい世帯を支援する既存の制度が十分に活用されていないことも明らかになった。非貧困層を含めた全体での利用は小1が13%、小5が18%、中2が19%で、いずれも子どもの貧困率29・9%より大幅に少ない。大阪市で行われた同様の調査(2012年)では、貧困層の割合が12%であるのに対し就学援助は約3割が利用している。
 今回の発表内容は調査の一部。統括主任研究者を務めた立教大学の湯澤直美教授は「来年度も分析を続けてアンケートに回答した子どもや保護者に応えたい」と強調した。県子ども生活福祉部の金城武部長は「態勢強化に取り組みたい」、青少年・子ども家庭課の大城博課長は「調査の継続を検討する」と意欲を見せた。

県の調査結果を報告する(左から)金城武県子ども生活福祉部長と加藤彰彦沖縄大学名誉教授、山野良一千葉明徳短期大学教授、龍野愛県子ども総合研究所長、湯澤直美立教大学教授=29日午後、県庁