脂肪再生し顔に移植  琉大医学部、国内初の新治療確立へ


この記事を書いた人 志良堂 仁

 琉球大医学部は9日、培養した脂肪組織由来幹細胞(ADSCs)を用いた顔面変形の再生治療に国内で初めて成功したと発表した。上顎洞(じょうがくどう)がん手術で顔の一部がへこんだ70代男性患者からADSCsを採取して同大再生医療研究センターで培養し、へこんだ部分に移植する手術を実施した。新年度中にこめかみや足のへこみなど3例の再生治療をし、移植治療技術を確立する。肝硬変、心筋梗塞などの治療にも応用できる可能性があるという。

 1月に患者の腹部からADSCsを採取し、約1カ月半培養した。培養後に脂肪を混ぜ、顔に注射する手術は今月2日に行った。男性は5日に退院、経過良好という。清水雄介形成外科特命教授が手術した。
 体の一部がへこんだ患者の再建手術は、体の別の場所から大きな組織を血管付きで移植することが多かったが、移植組織と移植先の血管を顕微鏡下でつなぐ困難さがあった。ADSCsを大量培養して脂肪と共に移植する技術が確立されれば、新たな治療の選択肢が増える可能性がある。
 幹細胞は骨髄や末梢(まっしょう)血由来のものなどがあるが、脂肪由来だと安全で十分な量を確保しやすい。将来的には他人の幹細胞を用いた研究も進める予定だ。
 同センターは昨年4月に開所。ロート製薬と共同で研究していた。須加原一博副学長は「沖縄の国際医療拠点形成に大きく寄与すると期待している」と述べた。