社会

ダウン症知って 山梨の玉井さん親子、琉大病院で講演

「1人暮らしをするのが夢」と話す玉井拓野さん(左)と見守る母真理子さん=宜野湾市のラグナガーデンホテル

 ダウン症について知ってほしいと講演活動をしている玉井真理子さん(55)、拓野さん(33)親子=山梨県=がこのほど沖縄を訪れ、琉球大学病院で講演した。拓野さんは1月に形質細胞性白血病という多発性骨髄腫の一種が見つかり、余命は1年と言われている。「本人の感じ方で見える世界は違ってくる」。拓野さんから真理子さんが教えられたことだ。

 妊婦の血液で胎児のダウン症などの染色体異常が分かる新出生前診断が臨床研究として導入されて3年。2013、14年度の2年間で1万7800人が受診し、295人が陽性と判断された。そのうち羊水検査で異常が確定するなどして中絶したのは221人に上った。75%が中絶を選ぶという現実の前に、母真理子さんは「どんな生活をしているのか知らないで『育てられない』と判断するのは残念。障がいや病気を持ちながら暮らすことの現実を知ってほしい」と話す。

◆出生前診断と神話

 拓野さんは地域の小中学校、養護学校高等部を経て、現在福祉作業所に通っている。作業所では箱を作ったり、包装をしたりしている。拓野さんは「作業所の仕事はみんながいるから楽しい。昼休みにバドミントンやオセロをするのも楽しい」と笑顔を見せる。帰宅後に父親とビールで晩酌をするのも楽しみの一つだ。
 「育てるのにお金がかかる」「親が死んだら生きていけない」「きょうだいがいじめられる」。出生前診断を希望する主な理由だ。
 真理子さんはこれらを「神話」だと指摘する。お金については乳幼児医療費助成や特別児童扶養手当、税金の控除がある。真理子さんには4人の息子がいるが「拓野が一番お金がかかっていない」と話す。
 親の死後も障害基礎年金やグループホームの制度で生活できる。いじめの原因はさまざまだ。

◆普通の子育て

 育てることの困難さについても真理子さんは「にっちもさっちもいかないことはない。確かに手のかかる時期は少しだけ長いが、私はすぐに下の子が生まれたので、一緒に育てた感じ」と悲壮感はない。
 障害者差別解消法ができるなど、障がい者を取り巻く環境も変化している。真理子さんは「当事者運動の結果、制度が整ったこともあり、子どもに障がいがあっても母親は生き方を変えなくてもよくなった。何より医師など専門家の見方が変わったことが大きい」と説明する。
 「障がいがあることが不幸なのではなく、障がいがあると不幸だとしか思ってもらえないことが不幸なのではないでしょうか」と問い掛けた。
(玉城江梨子)









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