【島人の目】日亜関係の深化に期待


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2015年12月10日、アルゼンチンは長年政権を維持してきた労働党ペロン党の流れを組む中道左派キルチケル政権が終わり、社民系急進党と連立政権を立てた右派マウリシオ・マクリ氏が大統領に就任した。

 外貨購入自由化、変動相場制、農産物輸出課徴金の一部撤廃に迅速に手を付けた。市警連邦警察と提携しスピード改革で国民を鼓舞した。今後調整中というインフレは継続、国庫を苦しめた助成金削除で公共交通料金、公共料金を大幅値上げし国民にショックを与えた。
 このような状況の中、アルゼンチンは日本を重要視しているものの、20年前は100社ほどあった日系進出企業は、現在50社ほどとなっている。
 日本・アルゼンチン・ビジネス環境整備委員会第1回会合が5日、アルゼンチン工業生産省にて開催された。冒頭、黄川田(きかわだ)仁志外務政務官とカブレラ工業生産大臣が経済対話の覚書に署名、日本側は45人、アルゼンチン側15人が出席した。
 ブラウン副大臣は親日家をアピール。「三本の矢」のエピソード、「SENPAI」として尊敬したいと続け、福嶌教輝(ふくしまのりてる)大使は逆にラテン的にフレンドリーで終始笑顔で接し、日亜関係も変わってきたことを象徴していた。同大使は、日系企業数を「20年前と同じレベルに引き戻したい」と述べた。
 第1回環境整備委員会では、日本側からの提言が積極的に行われ、ホンダ、NEC、ヤマハ、フジテック、双日、トヨタ、住友商事、三菱東京UFJ銀行の日本人駐在員、現地社員らが発言した。JICA、JETRO代表も同席した。
 日本側からの提言・要請は車両や技術革新システム製造業、鉱業に重点が置かれた。資材の輸入やその許可や手続きの問題、外国からの投資の奨励と保護、輸入規定など多岐に渡り議論が展開された。日本とアルゼンチンの「対話」で、本来の目的であるビジネス環境整備委員会の場を盛り上げることに成功したと言えるだろう。
 これはアルゼンチンが昨年10月マクリ政権になってからどこの分野でも「対話」を重点とした政策を行っており、一貫している行動だ。
 なお、アルゼンチンのガブリエラ・ミケティ副大統領は11日に来日し、安倍総理大臣と会談、12日に東京で開かれた「日アルゼンチン官民経済フォーラム」に出席した。
 アルゼンチンは資源も豊富で人材も優秀であるが、多くの政治経済問題で困難があった。しかし対話が今後も活発になり、補完関係にある両国の経済がさらに発展するのを期待したい。(大城リカルド、アルゼンチン通信員)