「民間雇用」外しで米軍、責任回避? 「特権」は温存


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 【ワシントン=問山栄恵本紙特派員】米国防総省のデービス報道部長は23日、米軍属女性死体遺棄事件で逮捕された軍属は「地位協定上の資格を与えられるべきではなかった」と述べた。容疑者について「米軍人でも国防総省が雇用する軍属でもなく、米軍施設に役務を提供する会社で働いていた」とし、今後、米国として日米地位協定を適用する民間雇用の米軍属の対象を見直す可能性を示唆した。

 ただ見直しの場合も、米側が裁量権を残して個別に適用の可否を判断する運用改善にとどまる可能性が高い。日米間の合意で地位協定の明文規定を変える「抜本改定」を求める県の要求とは大きく異なる。

 日米関係筋は、民間雇用の米軍属も軍の機密に触れる機会があるなどの理由で、民間企業が雇用する米軍属に対する地位協定の適用が全面的に除外される可能性は低いとしている。

 この問題を巡り24日に開かれた衆院安全保障委員会では、米軍属を日米地位協定の適用除外とするよう、改定を米側に求めるべきではないかとの質問が相次いだ。一方、政府側は米軍属を除外するには地位協定の改定が必要になるとして否定的な見解を示した。

<解説>米、沈静化狙うも根本放置
 米軍属女性死体遺棄事件を受け、米国防総省が日米地位協定に基づき特権を与えている民間雇用の米軍属の範囲を見直す可能性を示唆した。背景には民間雇用の軍属の犯罪で、米軍が責任を追及されている事態へのいら立ちがある。だが発言はあくまで地位協定による米軍の特権は温存したまま、特殊な雇用関係にある軍属の一部だけの“切り離し”を図り、米軍の管理責任を回避するような内容にとどまる。米軍に特権が存在すること自体を問題視し、保革を超えて地位協定の抜本改定を求めてきた沖縄側の反発が収まる見通しはない。

 日米地位協定に基づき、日本に駐留する米軍には軍人や軍属が事件を起こした際の身柄の取り扱い、公務中の事件・事故の免責、基地の運用に関する国内法の適用除外などが認められている。そうした状況が米軍の特権意識や気の緩みを招き、事件・事故や騒音問題が収まらない要因になっていると指摘され、県が改定を求めてきた。だが日米両政府は24日、改定の可能性を即座に否定した。

 県側は米軍絡みの事件・事故が後を絶たないのは、国土面積の0・6%の沖縄に74%の在日米軍専用施設が集中していることが本質的な原因だとして、負担の大幅な削減を求めてきた。

 過重な基地負担や米軍に対する法的な特権という問題の根本を放置したまま、米軍関係者のうちわずかな対象者を地位協定の適用から外すことで、今回の事件に対する県民の抗議運動を沈静化する狙いが米側にあるとすれば、不発に終わるのは明白だ。(島袋良太)