米軍が異例の記者会見 撤退要求に危機感か


社会
この記事を書いた人 新里 哲
記者会見するローレンス・ニコルソン在沖米四軍調整官=28日、キャンプ瑞慶覧

 米軍属女性遺棄事件を受け、ローレンス・ニコルソン在沖縄米四軍調整官が28日、記者会見に臨んだ。米海兵隊によると、四軍調整官の記者会見は「記録が残る限り初めて」の事態。米海兵隊はこれまでツイッターなどで沖縄の報道機関を批判する内容を投稿する一方、沖縄メディア側から米軍幹部へのインタビューの申し出にはほとんど応じない対応をしてきた。

 この日、ニコルソン氏は「地域との交流と対話を増やすため、メディアへの対応を増やしたい」と表明した。事件を機に県内では米軍への反発が高まり、全基地撤去を求める声が上がったり、県議会が復帰後初めて海兵隊の撤退を求める抗議決議を可決したりする中、米軍が世論に危機感を募らせている様子をにじませた。

 米海兵隊によると、この日の会見はニコルソン氏の強い意向で実施が決まった。会見でニコルソン氏の横にはジョエル・エレンライク在沖米総領事が立ち、背後には米空軍、海軍、陸軍、海兵隊の幹部らが並んだ。

 ニコルソン氏らは会見中、事件で命を落とした被害女性に黙とうした。続いて「この事件でわれわれとの関係を分断しないでほしい」「この凶悪行為によって私たちと皆さんの間にくさびを打たないでほしい」などと訴えた。来月19日には事件に抗議する県民大会が開催される予定で、県民の抗議運動の広がりに焦りを隠さなかった。

 ニコルソン氏は記者会見の直後に翁長雄志知事と電話会談し、基地外の飲酒や深夜外出規制の実施を報告。こうした規制は過去に何度も行われたが、翁長知事は事件を根絶できなかった点を指摘し、沖縄への基地集中の解消や、米軍にさまざまな特権を認めた地位協定見直しを含む抜本的な解決を求めた。

 だが日米両政府は事件後早々に、地位協定の改定に否定的な見方を示し、県が「基地負担の固定化につながる」と反対する普天間飛行場の辺野古移設も推進する方針を表明している。

 在沖米軍はトップによる異例の記者会見と30日の自粛期間で外形的な「誠意」(翁長知事)は見せたものの、今後約5万人に上る米軍関係者による事件・事故が根絶できるのか、具体的な方策は示されていない。現段階で県が求めるハードルとは懸け離れた状況で、沖縄側との緊張関係が解消されるめどはない。(島袋良太)