鉄道計画の採算、微増0・62 事業化基準届かず 国調査


この記事を書いた人 志良堂 仁

 【東京】内閣府は19日、沖縄県内に鉄軌道など新たな公共交通システムを導入する際の課題検討に向けた2015年度の調査結果を公表した。調査では鉄道に関して、開業から50年間での費用便益費(費用対効果)が0・62で14年度調査より0・02ポイント改善したが、事業化目安の1・0にはならなかった。トラムトレイン(専用軌道の路面電車)を導入する場合の費用便益費は前年度と変わらず0・84だった。

 15年度調査は、鉄道を導入する場合は糸満―名護間で国道330号を経由してうるま市を通る「うるま・国道330号」ルートで検討し、トラムトレインを導入する場合には糸満―名護間で国道58号を経由しうるま市を通る「うるま・国道58号」ルートで検討。両案ともに空港と那覇をつなぐ「空港接続線」を合わせて事業費を算出した。

 15年度調査は最新技術を使い、地下区間を地上化するなどの方策を組み合わせた結果、鉄道に関して概算事業費は6800億円となり、前年度よりも300億円低くなった。トラムトレインの概算事業費は前年度とほぼ変わらず、3180億円だった。開業後40年間の累積損益収支は鉄道が3900億円の赤字、トラムトレインは1100億円の赤字だった。

 内閣府は調査に当たり、前年度と比較し、建設工事費デフレーター(建築費指数)を4%、消費税を8%として試算。塩害対策として線路を樹脂でコーティングする方策や、定時運行を守るために海沿いを走る際の防風策の設置なども検討に盛り込んだ。

 鉄軌道整備による年間の他交通機関への影響については路線バスが5・4億円、モノレールは3・1億円、タクシーは3・1億円の減収が見込まれるとしている。