今では見かけなくなりましたが、昔は飲食店などに無料のマッチが置いてありました。県内で収集されたマッチを「レトロマッチ」として楽しむ本が出版されたみたいですよ。どんな本なの?調べてみてください。
(沖縄市タコパン)
マッチですか、最後に使ったのはいつだったかな~。少し調べると、依頼のあった本は先月発売されたばかりの『沖縄レトロマッチの世界』(ぎすじみち写真・文、ボーダーインク)だということがわかりました。
本を手に入れてめくってみると…。あっ、なんだか懐かしい雰囲気。バーやホテル、ビヤレストランの店名がデザインされたマッチ箱の写真が並んでいました。銀行や保険会社の広告が載っているものもありますね。
コレクションとの出合い
本の著者はデザイナーのぎすじみちさん。県内のレトロな物や風景を収集・記録しています。これまでに「ノスタルジックシリーズ」として写真集を2冊出版しているんですよ。まずはレトロマッチとの出合いを聞きました。
「約1年前、友人が『ネットの出品サイトですごいものが手に入ったのでぜひ見てほしい』と出してきたのが、ブリキの箱いっぱいに詰められたマッチのコレクションでした」
そう話すぎすじさん。マッチは全て県内の店舗や会社のもので、計144個。遺品整理として出品されていたそうで、元の持ち主の方が生前にコレクションしていたものでは、と推測しています。
友人の方は、レトロ好きなぎすじさんに、快くコレクションを譲ってくれたそう。そんな好意も受けて「保管するだけではもったいない。ちゃんと記録し、日の目を見るものにしないと」、と書籍化を決めたんですって。
小さな箱に宿るもの
レトロマッチからは、かつての世相も読み取れます。電話番号が5ケタだったり、「立法府」や「1号線」(現・国道58号)を目標にした地図があったり。海洋博(1975年)を記念したものは、海の風景やパビリオンの写真をレイアウトし、バリエーションがあります。面白いのは行政が配布していたもの。公共マナーに関する標語などが記してあります。現代のポケットティッシュのように、誰にでも配りやすいアイテムとして、マッチが選ばれていた時代があったんですね。
バーや料亭のマッチには、店名、住所、電話番号といった最低限の文字情報だけのものもあります。シンプルですが、それだけで店の雰囲気が伝わるようなたたずまい。写植時代のデザイナーによるこだわりの手書きフォントです。「デジタルにはない存在感がすごい」とぎすじさんはうなります。一方「版ズレ」と呼ばれる明らかな印刷ミスがあるマッチも。こちらは温かみとして楽しんでほしいそうです。
今月16日までは、沖縄市の書店「タビネコブックス」で本の出版を記念したコレクション展も開催されました。マッチを見て、「おばあさんが働いていたお店です!」と思い出す人もいたとか。小さなマッチ箱には、たくさんの記録や記憶が詰まっているのです。本を手にとって、その奥深さを感じてみませんか。
『沖縄レトロマッチの世界』
ぎすじみち写真・文
ボーダーインク
1980円(税込)
〈取材協力〉rat&sheep
(2024年9月19日 週刊レキオ掲載)