米大統領選と普天間 沖縄にとって、何が重要 <特派員報告>


この記事を書いた人 金城 美智子

  ■メール問題浮上、情勢に不透明感 
 8日の米大統領選まで1週間を切った。NBCニュースと調査会社サーベイモンキーが10月31日に発表した最新の合同世論調査によると、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官の支持率は共和党候補のドナルド・トランプ氏に対し、6ポイントリードし、クリントン氏の「優勢」を伝えている。ただ、連邦捜査局(FBI)がクリントン氏の私用メール問題に関する捜査の再開を連邦議会に伝達したことで、情勢は一気に不透明感を増したとの見方もある。

米大統領選の第3回討論会で議論を交わすクリントン氏(左)とトランプ氏=10月19日、ラスベガス(AP=共同)

  ■辺野古推進のクリントン氏
 米首都ワシントンでは大統領選を控え、シンクタンクや研究所、大学が両候補者が掲げる政策を検証したり、新政権誕生後の米外交や安全保障、経済などの行方を探ったりするイベントが開かれている。来年1月の新政権誕生後、翁長雄志知事が反対する米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設など米軍基地問題はどうなるのか。新政権の対応を探るためにこうしたイベントにも足を運んでいる。
 だが、このようなイベントに参加する日米関係者や研究者から決まって言われるのは「沖縄にとって、次期大統領はトランプ氏の方がいいのでは」という言葉だ。
 対立候補のクリントン氏は、国務長官時代に「普天間飛行場の代替施設建設を含む在沖米軍再編の進展に自信を持っている」と断言。同氏が大統領になれば、辺野古移設を推進する立場で政権運営に臨むと推測される。

  ■トランプ氏は在日米軍撤退示唆
 一方、トランプ氏は日米安保条約について「片務的な取り決めだ」とし、日本が駐留経費の負担を大幅に増額しなければ、在日米軍を撤退させるとの考えを示したほか、安保条約の見直しにも言及した。
 ただ、トランプ氏が普天間移設に対する自身の考えを示したことはない。知り合いの研究者は「トランプ氏は普天間移設問題どころか、沖縄がどこにあるかも知らないのでは」と指摘する。クリントン氏と比べ、在日米軍の撤退を示唆し、普天間移設問題について「白紙」状態とみられるトランプ氏の方が移設計画を見直す余地があるとの見方だ。

  ■新政権へ移設強行不利益をいかに浸透させるか
 新大統領の任期が始まるのは来年1月20日からだ。新大統領は各省の長官、副長官、局長以上の人事を刷新する。クリントン氏、トランプ氏のどちらが大統領に就任しても、新体制の下、辺野古移設問題を検証することになり、同問題への対応は新しい大統領に委ねられることになる。
 辺野古移設に反対する翁長知事、稲嶺進名護市長はあらゆる手段を行使し、新基地建設を阻止するとしている。沖縄の民意を無視して強硬に移設工事を進めることは困難であり、米国にとっても有益ではないことを新政権にどう浸透させられるのか。県、県ワシントン事務所の取り組みが問われている。
(ワシントン・問山栄恵本紙特派員)

※(本欄は琉球新報本紙に随時掲載。電子版は見出しに編集を加えています)