電磁過敏症、日本にも 頭痛や皮膚症状 診断基準確立目指す


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北條祥子氏

 日本人の3・0~5・7%が電磁過敏症の症状を訴えているとの研究結果を、早稲田大学応用脳科学研究所の研究グループ(代表・北條祥子尚絅(しょうけい)学院大名誉教授)が11日までに発表した。電磁過敏症は携帯電話や家電製品などが発する電磁波にさらされると、頭痛や皮膚症状などが現れる。世界保健機関(WHO)は電磁過敏症の症状が存在することは認めているが、電磁波との因果関係は科学的に証明されていないとしている。研究グループは今回の研究で開発した問診票などを普及させることを通し、診断基準の確立などに役立てたい考えだ。

 論文は国際学術誌「バイオエレクトロマグネティックス」9月号に英語で掲載された。論文を基にした北條氏の概説記事が、国内の学術誌「臨床環境医学」(日本臨床環境医学会発刊)12月号に掲載される。

 電磁過敏症の症状を訴える人の割合を問診票を用いた調査で算出した研究結果は、英国で2万人を対象とした調査で「人口の4%が症状を訴えている」とする結果が出ている。国内では初めてとみられる。

 研究グループの実態調査は2012~15年に実施。沖縄を含む32都道府県の一般市民1306人から有効回答を得た。うち「電磁波の発生源と症状を二つ以上記述している」などの基準を超えた60人を、電磁過敏症の症状を訴えていると認めた。ほかに電磁過敏症の自助グループなどで症状を自己申告している127人からも回答を得た。

 症状は鬱(うつ)や集中力・注意の欠如などの神経症状が最も多く、腫れや赤みなどの皮膚症状が続いた。頭痛や耳鳴り、関節痛や脱力感などもあった。

 症状と電磁波の発生源との関係については、自助グループの回答者のうち家電製品が76人で最も多かった。次いで携帯電話が74人、パソコン53人、携帯電話の基地局39人、テレビ24人、蛍光灯23人、送電線16人、電子レンジ15人、ラジオ・テレビ塔7人と続いた。ほかにバスや電車、無線LANなどの回答もあった。

 北條氏は「家電製品や携帯電話があふれた現代では誰がいつ発症してもおかしくない。健康リスクは今後さらに大きな問題になるだろう。予防に生かすため、症状を訴える人が存在する事実を知らせる時期に来ている」と強調。「欧州などでは安全性が証明されるまでは危険だと考える『予防原則』を取り入れ、電磁波の基準値を厳しくした地域もある」と指摘した。

 電磁波に対し、日本は電波防護指針で急性症状に対する基準値を定めている。電磁過敏症など慢性症状に対する基準は欧州などで複数の国・地域が導入しているが、国内では未設定だ。