天皇メッセージ発見者・進藤栄一氏に聞く 「苛烈な現実 今も」


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 天皇メッセージを発見した進藤栄一筑波大学名誉教授に、その今日的意味などについて話を聞いた。(聞き手 滝本匠)

 ―対日講和条約発効では昭和天皇からの沖縄長期占領の提案内容を踏まえる格好で、日本独立の裏で沖縄の米占領が継続された。

 「天皇メッセージは、1947年9月に宮内庁御用掛の寺崎英成が米国側に伝えたものを米本国に送った報告電文で、昭和天皇がすすんで沖縄を米国に差し出すという内容だった。昭和天皇の侍従長を務めた入江相政の日記でも裏付けられた。昭和天皇実録でも確認されている」

 ―当時の背景は。

 「まだ占領軍内で沖縄をどうするか意見が分かれていた。軍事化を進めて共産主義の対抗基地に使うというタカ派と、日本の民主化を進めることが平和構築につながるとするハト派が拮抗(きっこう)していた。そこへ天皇メッセージが出て来て、それを軸に占領軍内での沖縄の位置付けが反共拠点として要塞(ようさい)化すべきだというものへと明確化していった。それが天皇メッセージの歴史的意義だ」

 「さらに翌48年2月に寺崎が2度目の天皇メッセージを届ける。その中で『南朝鮮、日本、琉球、フィリピン、それに可能なら台湾を含め』て反共防衛線をつくるべきだと提言する。最も恐るべきは日本の共産主義化だと。これは戦前以来の発想だった」

 ―沖縄は日本から切り離され米施政権下を経て72年に日本に復帰した。だが米軍基地の集中は変わらず、基地の自由使用など“軍事占領”ともいえる実態は今も続いている。

 「沖縄が日本に復帰した後も米軍基地は残り、逆に強化されている。これは天皇メッセージに始まる沖縄の苛烈な現実の帰結だ」

 ―安倍政権は「辺野古が唯一」と米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の埋め立て作業を強行している。日本の沖縄に対する姿勢は今も天皇メッセージと通底しているようにも見える。

 「まさにその通りだ。安倍政権の対米追随姿勢が象徴的に表れている。オバマ大統領に続いてトランプ米大統領とも『辺野古が唯一』と確認した。沖縄を米国に差し出すことが、昔も今も日米軍事同盟の結節点となっているといえる」