年収1千万円以上が多い? 誤った「格差」強調 高所得世帯の割合は全国最下位 【貧困雇用 沖縄経済を読み解く(2)】


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 「沖縄は全国一平均所得が低いが、実は年収1千万以上の所得を得ている人(または納税者)は、対人口比で全国10位と金持ちも多い。すさまじい格差社会である」

 こうした主張をする人は「沖縄は基地問題で被害者だと主張する一方で内部の差別や格差には目を向けない社会だ」「沖縄は前近代的な地縁血縁社会であり、それが問題の根源である」などと指摘します。

 こうした主張はインターネットでも拡散され、沖縄について議論する際の前提にもなっているように見えます。

 しかし、これらの言説は事実ではありません。むしろ非常に意図的でかつ正当性を欠くものなのです。

 この数字は、実は、沖縄の確定申告者の16万6506人のみが分母です。うち1千万円以上の所得者は7739人。確定申告100人当たりの1千万円超の所得者数が4・65人という数字にすぎません(2012年)。

 つまり、この中には役員報酬をもらっている人も源泉徴収されている会社員なども含まれていません。あくまでも確定申告した人の中での1千万円以上の所得者の100人当たりの割合にしかすぎないのです。

 「所得を得ている人」や「納税者」とは確定申告した人だけではないので、その表現自体も正確ではありません。

 実際は、沖縄の年収1千万円以上世帯数は1万1600世帯で、100世帯当たり1・96世帯となり、全国最下位なのです(13年)。

 これは住宅・土地統計調査を基に算出したものですが、就業構造基本調査を基に算出したものでも沖縄の年収1千万円以上世帯数の割合は3・35%と全国最下位です(12年)。これらは世帯における数値ですが、もちろん単身世帯も含まれます。分母は役員報酬をもらっている人も、源泉徴収をされている会社員も全て含まれます。

 従って貧富の差、つまり所得格差を見るなら県民が分母の統計を引用すべきなのですが、県民のうち確定申告をした人だけを分母として年収1千万円以上の人の人口比は全国10位という統計のみを引用し、沖縄は低所得者が多いが、高額所得者も多い貧富の差の激しい、すさまじい二極化した超格差社会という誤ったイメージをつくり出しているのです。(安里長従、司法書士)