労働分配率は全国を下回る? 実は個人企業を含めると全国よりも高い 【貧困雇用 沖縄経済を読み解く(6)】


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄は所得に占める雇用者報酬の割合である「労働分配率」も全国平均より下回っているという言説をよく耳にしますが、2014年度の全国労働分配率の平均は69・58%で、沖縄は69・51%で全国23位と、全国平均より低いのですが、ほぼ平均値です。

 この数字は、法人企業のみで個人企業は含まれていません。個人企業も含めた場合はどうなるでしょうか。個人企業も含めた労働分配率の算出式は複数ありますが、いずれの算出式でも沖縄は全国平均を上回り、算出式(1)(県民所得〈要素費用表示〉を分母とし、県民雇用者報酬を分子とする)では全国平均63・47%、沖縄は64・47%で全国15位です。算出式(2)(県民所得〈要素費用表示〉÷就業者数を分母とし、県内雇用者報酬÷雇用者数を分子とする)では、全国平均72・30%、沖縄74・58%で全国13位です。算出式(3)(県内総生産÷就業者数を分母とし、県内雇用者報酬÷雇用者数を分子とする)では、全国平均55・46%、沖縄は57・14%で全国15位と、いずれの計算式でも労働分配率の順位は上昇するのです。

 仮に、個人企業も含めてオーナー企業が多いというなら、法人だけの労働分配率を示して労働分配率が低いというのは間違った統計の引用です。しかも法人の分配率は全国平均より下ですが、ほぼ全国平均に近いので「『労働分配率』が全国平均を下回り」とだけ記載するのは説明が不十分です。そして個人企業も含めた労働分配率は全国平均を上回るのですから、沖縄の企業は、全国に比較して、経営者の親族にお金が回っていて、一方で雇用者にお金が回っていないという事実は確認できないのです。

 従って沖縄は全国に比べてオーナー企業が多く、それ故に、沖縄は全国に比べ、利益を自身や親族に回し、一般の従業員には十分に賃金を分配しない搾取社会というのは根拠のないものだといえます。
(安里長従、司法書士)