安里、跳馬で世界狙う 体操日本代表候補 大けが乗り越え


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
全日本体操種目別選手権の跳馬で入賞した安里圭亮(提供)

 三重県の相好体操クラブで指導員をしながら競技を続ける沖縄県北中城村出身の安里圭亮(興南高-福岡大出、23歳)が、世界選手権(10月・モントリオール)の日本代表候補となった。選考となった全日本種目別選手権(6月24~25日、群馬県)では、跳馬に出場し予選をトップで通過、決勝は5位に入賞した。世界選手権出場となれば、1995年の松永政行(大阪府出身、興南高出)以来、沖縄県関係者は23年ぶりだ。「得意な跳馬で(代表候補を)狙っていたのでうれしい。目の前のチャンスをしっかりつかみ取りたい」。大学時代のけがを乗り越え、頭角を現し始めた跳馬のスペシャリストが世界舞台を展望する。

相好体操クラブで指導する安里圭亮(提供)

■白井抑える

 全日本種目別選手権、決勝では1本目に大技「リ・セグァン」に挑んだ。「予選に比べて力み過ぎて着地が前のめりになった」(安里)と着地に失敗し、得点が伸び悩み5位となった。しかし予選で出した15・025は全日本選手権個人総合予選、NHK杯、今大会の予選・決勝など、選考大会を見回しても最高得点となり、代表候補入りをつかんだ。今大会は予選、決勝ともリオデジャネイロ五輪同種目銅メダルの白井健三を抑えた好成績だった。

 決勝は反省が残ったが、予選の結果には及第点を付ける。

■故障ばねに

 5歳で体操を始め、宮里中で九州体育大会の団体で県勢として9年ぶりの優勝を果たした。興南高校に進学後も2010年の美ら島高校総体などに出場した。目立った成績は残せなかったが、同校体操部のコーチだった知念義雄・県体操協会会長は「いつもミスが少なく安定感があり、点数が出せる選手だった。団体では1番手に起用するほど信頼できた」と振り返る。

 体操を続けるために福岡大学に進学するも、1年生の時に右肩を骨折する大けがを負った。復帰までの1年間は器具に触ることすらできなかった。「周囲が(器具を使った)練習をしていると自分もしたかった」

 焦る気持ちもあったが、「練習できなかった期間を復帰した時にプラスに変えよう」と体幹や下半身のトレーニングを徹底した。これが、跳馬が得意種目になるきっかけとなった。3年生で本格的な練習を再開し、4年の時には全日本学生体操競技選手権大会の種目別跳馬で2位となった。「下半身を鍛えたことで力強く踏み切ることができるようになった。空中姿勢も体幹を鍛えたことで安定し、抱え込みの姿勢を維持できるようになった」と跳馬での効果を語る。

■チャンス到来

 大学卒業後は競技を辞め、就職することも考えたという。相好体操クラブに声を掛けてもらい、指導者をしながら競技を続けた。週5回の練習の大半を跳馬に時間を割く。同種目にこだわり、地道に技を磨き続ける。昨年の全日本種目別選手権の跳馬では3位に入り、社会人になり初めて全国上位の結果を出した。

 今後は代表候補メンバーとの合宿などで選考が行われ、9月上旬には代表が決まる。これまで安里に世界大会の代表経験はない。知念会長は「安里はまだまだ伸びしろがあり、楽しみにしている」と期待を寄せる。

 安里は「めったにない、一度しかないチャンス。しっかり代表になって自分の跳馬の跳躍を見せたい」と意気込んだ。
(屋嘉部長将)