Vol.6 働き方改革〈下〉 子育てと仕事は両立できる? 新しい学びと入試改革に対応するMANALAB★


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もっと深く、広く知る

 

 8月28日の琉球新報「MANALAB★」では女性と労働について取り上げました。(1)子育てのため転職したシングルマザーの話(2)男女雇用機会均等法から30年たち県内の働く人は半分が女性というデータ(3)働く親の子どもたちを預かる保育士だけど、給料が安くてなり手がいない(4)国は男性の育休取得を促進しようとしている(5)女性就業率の高いフィンランドは残業が少なく、男性も育児に積極的―という5本の記事を紹介しました。

 さらに深く広く知るためにWEB「MANALAB★」では沖縄の働く女性の現状、働き方改革で女性がキーワードになるのはなぜ?社会を変えるにはどうしたらいいのか?を記者と一緒に読み解いていきましょう。

 2016年4月1日、「女性活躍推進法」が施行され、「女性が輝く社会」という言葉をよく聞くようになりました。企業や自治体に女性の活躍に関する情報の公表などを義務づけたこの法律は、平たく言うと「働く女性の活躍を後押しします!」というものです。

 どうして働く女性の活躍を後押ししないといけないのでしょうか。

 日本は少子高齢化が進み、人口減少時代に突入しています。人口が減るということは、労働力が不足するということでもあります。そこで採用や昇進の機会を増やし女性に力を発揮してもらい、日本社会の活力を維持しようというのが政府の狙いです。

 では、沖縄の働く女性の現状から見てみましょう。
 

1.沖縄総合事務局の「働く女性に関する意識調査」

 76%もの女性が離職、転職経験があります。正社員と非正規の育休取得率の差も注目しましょう。育休という権利があって、法律に定められていても、非正規だと産休、育休を取れなくて離職していることが分かります。紙面「MANALAB★」で触れましたが、女性の約半数は非正規です。本人が子育てをしながら働きキャリアアップしたいと思っても、そもそもできない状況があります。
 

女性管理職はごくわずか

記事:企業の女性管理職 県内5.1%
登用ゼロ56%

 管理職とは会社によって異なりますが、一般的に課長、部長などを指し、部下を指導したり、判断を下したりする組織のリーダーです。紙面「MANALAB★」でも紹介しましたが、沖縄県内の働く人の半分は女性です。しかし企業の管理職になると女性の割合はわずか5・1%。全国平均でも6・6%。女性管理職はなぜ少ないのでしょうか。次の2つの記事を読んで考えてみましょう。
 

3.女性の意識の問題?

記事:女性正社員、69%が昇進望まず
責任増すことに不安

 

4.子育てを経て経営者になった女性は何を考えている?

 

 3.の記事では「女性が昇進を望んでいない」という調査結果が出ていますが、4の記事を読むと「管理職になりたくない」という女性の言葉の裏には「管理職になって責任が増すと子育てと仕事を両立できない」、「男性管理職のように長時間労働はできない」という現実があるのではと読み取れます。

 働き方改革と女性活躍が同時に進む今、女性の活躍に必要なのは長時間労働という今までの男性のような働き方をするのではないと言えそうです。
 

5.待機児童問題も考えてみよう

 

 子育てをしながら働くには保育園が必要ですが、保育園に子どもを預けようと思っても預けられない待機児童問題は県内でも深刻です。なぜ保育園に入れないのか?それは保育士が不足しているからです。

 紙面「MANALAB★」でも紹介しましたが、保育士不足の原因は給与の安さにあります。
 

6.「仕事の割に給料安い」

 

 男性保育士も増えましたが、保育士の多くは女性なのが現状。彼女たちもまた働く母親です。つまり保育士自身も仕事と子育ての両立に悩みながら働いていることが想像できます。また女性の職業というイメージが強い保育士の給与が低いこと自体も女性の労働の実情を表していると言えます。

 

7.制度を作る政治の世界は?

 みなさんは選挙の時に新聞やテレビで「女性議員が●人に」「女性躍進」というニュースを目にしたり、女性候補が「女性の視点を生かしたい」などと言ったりしているのを見たことがないですか?女性議員の存在が私たちの生活にどう影響するのか次の3本の記事から考えてみましょう。

記事:女性議員、日本は163位 順位低下、G7最下位

 

8.ジェンダー格差指数を下げているのは女性国会議員の少なさ

記事:<金口木舌>ジェンダー格差指数111位

 

9.女性議員が少ないと男女共同参画進まない

 

 女性だから気がつくこと、子育てをしているから気がつくことがあります。子育てや家事の経験が少ない議員ばかりだと子育てに関することや私たちの暮らしに身近な問題が議会で取り上げられず、解決されないのです。

 では、女性議員が増えればいい!と思いますが、今の日本では女性議員たちも制度の整備遅れで苦境に立たされています。
 

10.女性議員は出産できないの!?

記事:公表で批判続々 前例少なく制度整備遅れ

 妊娠を公表した女性議員に対して批判が相次ぎました。女性にとって出産はライフイベントです。議員をしているから出産できない。出産するなら議員を辞めろとなると、子育て中の女性の政治参加は難しくなりますね。働き方改革、日本の成長戦略の両方の側面から「女性」がキーワードになっています。女性議員たちには子育てをしたからこそ分かることを政策に反映させてほしいのですが…。

 

 10本の記事から働く女性の置かれた現状やなぜ働き方改革で女性がキーワードになってくるのか見て来ました。

 最後にもう1本。昨年大ヒットしたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。実はこのドラマは長年研究者たちが指摘してきた「育児や家事を誰が担うのか」「家事はタダなのか」という社会問題を取り扱っていました。男性の長時間労働を支えてきた無償の家事労働という言葉も知っておくといいでしょう。

記事:ドラマ大ヒット 無償の愛…有償の家事?

 

 

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 ほとんどの新聞社のサイトにサイト内検索機能があるので、活用してみてください。インターネットは誰もが情報を発信できる便利さの一方、信ぴょう性の低い情報も混ざっています。学習や入試の時事問題対策で情報を収集するときは、サイト内検索を活用することをおすすめします。

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ひとり親世帯等実態調査

 沖縄県が県内の母子世帯、父子世帯の生活実態などを総合的に把握し、ひとり親世帯の福祉施策を強化・推進するために5年に1度実施している調査。直近の2013年度調査では、県内の全世帯に占める母子世帯の割合は5・46%で全国一高い。

就労収入

 働いて稼いだお金

夜間保育園

 一般的な保育園は午後6時まで開園し、その後午後7時頃まで延長保育を実施しているのに対し、夜間も開園し子どもを預かっている保育園。24時間営業の園もある。

男女雇用機会均等法

 職場における男女の差別を禁止し、募集・採用・昇進・教育訓練・定年・退職・解雇などの面で男女とも平等に扱うことを定めた法律。1986年施行。その後97年に一部改正され、女性保護のためにもうけられていた時間外や休日労働、深夜業務などの規制を撤廃。さらにセクシャル・ハラスメント防止のため、事業主に対して雇用上の管理を義務づけている。

女性活躍推進法

 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の略称。女性が、職業生活において個性と能力を十分に発揮して輝ける環境を整備するために制定された法律。2016年施行。

待機児童問題

 子育て中の保護者が、仕事や家庭の事情などで保育園への入所を希望し、申請しているにもかかわらず、入所できないで待機を余儀なくされている児童の問題。以前から東京23区や神奈川県横浜市といった都市部、沖縄県などで認可保育園への入所が困難なことが問題となっていたが、2016年2月、インターネット上に匿名で投稿され、入所選考に落ちた怒りをつづった「保育園落ちた日本死ね」と題したブログが保護者らの共感を呼び、国などに早急な対策を求める声が広がった。

雇用者数

 会社、団体、官公庁又は自営業主や個人家庭に雇われて給料、賃金を得ている者及び会社や団体役員の数のこと。

非正規労働者

 正社員以外の非正規雇用の形態で働く労働者。アルバイト、パートタイマー、契約社員、派遣社員などとよばれる労働者の総称である。通常は、時間当り賃金が正規労働者よりも低く、福利厚生面などでの待遇も悪い。半年、1年などの短期契約が多く、キャリアアップのための制度や正社員へ登用する仕組みも設けられていないことが多い。

育児休業

 1991年に制定された育児介護休業法に基づき、子どもを養育する労働者が取得できる休業。原則として子どもが1歳に達するまでの間、男女問わず労働者は取得できる。育児休業の期間中には給与が支給されないかあるいは減額されるのが普通ですが、収入源を補うものとして育児休業基本給付金と育児休業者職場復帰給付金の支給を受けることができる。

合計特殊出生率

 1人の女性が生涯に生むと見込まれる子どもの数。その年の15歳から49歳までの女性が生んだ子どもの数を元に算出する。人口を維持できる水準は2・07とされ、将来の人口が増えるか減るかをみる指標となる。

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★ 小論文を800字以内で書いてみる
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★ 各テーマの課題を解決する提案をプレゼンテーションにして、発表する