【島人の目】「住みたい街」の明暗


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 「全米で最も住みたい街」といわれる米西海岸のオレゴン州ポートランドではこれまでにない建設ブームを迎えている。

 都市部はもちろん、商業施設が少ない郊外などでも住宅などが相次いで造られている。ここ数年、米国各地からの人口流入や景気上昇などによるマンションや商業施設の需要増で、街中では常に工事が行われている。大型クレーンやトラックが既に街の風景の一部となっており、工事に伴う交通規制もたびたび実施されている。一方で、交通渋滞や家賃の値上げなどで地元住民からは不満が噴出している。

 ポートランドは、豊かな自然に囲まれており、独特な生活スタイルを持つ「ヒップスター」が多いことなどで知られる。ヒップスター文化などに憧れる若者にとって、ポートランドは「退職後最も住みたい街」ともいわれる。しかし、不動産価格の上昇や生活費の高騰などで生活苦に陥る人も少なくないという。

 アビー・コベルさん(27)は「毎月1025ドル(約11万円)の家賃を支払っていた。ほとんど貯金ができない」とため息をついた。

 コベルさんは2015年から都市部まで車で5分ほどの築40年以上のアパートに住んでいた。入居した当初、毎月の家賃は925ドル(約10万円)だったが、16年は前年比約8・0%増となり、千ドルを超えた。「いくらでも需要はあるから、と言う不動産会社に従うしかなかった」と憤る。

 経済が好調な沖縄も高層マンションや住宅の着工が右肩上がりで、将来同じような問題が起こらないとも限らない。ポートランドが沖縄の反面教師になるか今後も注目していきたい。
 (呉俐君、本紙記者)