命の尊さ 世界へ発信 ひめゆり平和研究所開所 構想10年 関係者喜び


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 【糸満】ひめゆり平和祈念資料館の展示や研究をさらに充実させ世界に発信していこうと、ひめゆり平和研究所が16日、糸満市伊原の同資料館内に開所した。構想から10年ごしの開所となり、元学徒や学芸員らが出席して開所式が開かれた。所長を兼務するひめゆり平和祈念資料館の島袋淑子館長は「亡くなった先生や友に開所を報告した。みんな今日の日を喜んでいると思う。戦争のむごさや悲惨さ、命の尊さをもっと多くの人に伝えられる資料館と研究所になることを願っている」と語った。

収蔵庫に保管されている第一外科壕などで収集した資料について説明する元ひめゆり学徒ら=16日、糸満市伊原のひめゆり平和祈念資料館内

 ひめゆり平和研究所は、ひめゆり平和祈念財団の本村ツル前理事長が2008年に発案し、開所に向けて故・大田昌秀元知事ら有識者を招いて議論を重ねてきた。

 開所式で本村前理事長は大田氏の県知事時代、世界平和研究所の開設について議論を進めてきたが、県政交代で実現できなかったことを明らかにした。「長いこと会議を重ねたのでとても残念に思っていたが、うちには優秀な職員もいるし資料館もある。ここでできないかと話をした」と設立のきっかけを説明した。

 研究所では、財団が所蔵するひめゆりや沖縄戦関係の資料を整理・研究するほか、戦争体験の継承や伝えるための展示手法などについて国内外の実情を調査する。研究成果は英訳し、世界に発信していく。

 本年度実施した国際平和博物館会議への職員派遣など、国内外の団体との交流も継続する。また、同資料館の学芸員3人と説明員3人の計6人で調査・研究を進めるだけでなく、県内外の研究者らとの共同研究も検討している。次年度以降はひめゆりや沖縄戦などに関する研究や活動への助成なども予定している。

 仲程昌徳理事長は「構想から10年がかりでやっと設立できた。ひめゆりの証言活動を続けてきた会員らの力のたまもの」と語った。開所式では、本村前理事長が記した看板を、仲程理事長と島袋館長が取り付けた。