ペルー県系 紙芝居で交流 ルーツの地 温かく 3世ぺぺさん 県人作家と共演


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 10月30日は世界中のウチナーネットワークを継承・発展させ、繁栄の願いを込めて制定された「世界のウチナーンチュの日」。世界に雄飛した県系人と、県内のウチナーンチュとの交流はさまざまな分野で広がっている。

ペルー人で県系3世の紙芝居作家ペペ・カバナ・コハチさん(左)と親交を深める紙芝居・絵本作家の佐渡山安博さん(右)

 ペルー在住で県系3世の紙芝居作家、ペペ・カバナ・コハチさん(47)は、県内で紙芝居・絵本作家として活躍する「さどやん」こと佐渡山安博さん(48)と紙芝居を通じて絆を深めている。

 27日、那覇市の銘苅こども園で、ペペさんと佐渡山さんは紙芝居公演を行った。佐渡山さんが地球儀や紙芝居を使って、ペルーのことやスペイン語のあいさつを子どもたちに紹介。続いてペペさんが「ウサギとカメ」の物語を声色をたくみに操って読み進めると、子どもたちは目を輝かせた。2人の息はぴったりだ。

 ペペさんにとって、19年前に独学で始めた紙芝居は、自らのルーツを感じることができる大切な存在である。母方の祖父が西原町出身とされるが、詳しいことは分からない。祖父はペルー人の祖母と結婚後、周囲の反対で離婚。身重の祖母に告げず、ペペさんの母親の姉2人だけを連れ、家を出て行った。

紙芝居作家のペペ・カバナ・コハチさん(左)が子どもたちを物語の世界に引き込む=27日、那覇市の銘苅こども園

 ペペさんの母親は「なぜ自分だけ置いて行かれたか」と苦しみ続けた。ペペさん自身も「ペルー人の中にいても、日系人の中にいても違和感を感じた」と言う。「自分は何者なのか」。その答えを求め続けるペペさんのよりどころになったのが、沖縄の文化や紙芝居だった。

 ペペさんは昨年11月、自身のルーツを探すため、初めて沖縄を訪れた。そこで出会ったのが、しまくとぅばや民話を題材にした紙芝居で活動している佐渡山さんだった。「紙芝居への情熱が伝わってきた。その情熱はお互いに共通のものだと感じた」と感動した当時を振り返った。

 ペペさんは今年8月、佐渡山さんをペルーに招待した。今回の訪問ではペペさんは佐渡山さんの自宅に滞在し、「家族に温かく迎えられた」と目を潤ませる。2週間ほど沖縄に滞在し、11月3日に帰国する。ペペさんにとって一つ一つが新鮮で、帰国後は紙芝居のテーマにもしたいと意気込む。

 紙芝居に出会い、ペペさんの夢は今、大きく膨らんでいる。ペルーでは経済格差が大きく、貧困が大きな社会問題だ。自由に本が借りられない子どもも多い。「図書館や小さな劇場、カフェを併設した文化センターを造りたい」。それがペペさんの夢だ。

(中村万里子)