オリオンビール、タイでじわり拡大 直行便で沖縄の認知度向上


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タイでオリオンビールの浸透を図るタナワット・インダストリアルの関係者。左端はオリオンビールの宮里政一常務=30日、バンコクのマックスバリュ

 【バンコクで与那嶺松一郎】オリオンビール(沖縄県浦添市、與那嶺清社長)がタイの首都バンコクへの輸出販売を広げている。関税や輸送費がかかることから競合製品と価格面で苦戦していたが、格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーション直行便就航もあって沖縄の認知度向上が追い風になった。飲食店を中心に取り扱いを増やしている。

 バンコクの中心地にある日本食レストラン「SHINSEN」。2016年6月に開店し、和とモダンを組み合わせたスタイリッシュな内装が現地でも話題となっている。日本から取り寄せた鮮魚やカニ、エビのいけすを並べ、だしやしょうゆの販売など、徹底した日本へのこだわりを見せる中で取り扱われている酒の一つがオリオンビールだ。

 17年4月からドラフトの取り扱いを始めた。缶に桜が描かれ、年末年始に限定販売する「いちばん桜」を並べたところ、すぐに完売した。経営者のアユス・ポチャナントさんは「スタンダードに加えて季節限定の商品があるのがいい。質を求める客が多いので、価格が高いというのは気にならない」と語る。

 店頭での350ミリリットル缶の価格は、シンハーなどの地元ビールや、スーパードライといった日本メーカーの商品が40バーツ(約140円)程度で売られているのに対し、オリオンビールは110バーツ(約385円)程度と3倍近い差がある。アサヒやキリンが現地で製造しているのに対し、沖縄から製品を輸入するオリオンビールは、関税と輸送費用が販売価格に反映する。

 オリオンの宮里政一常務は「価格面で難しさはあるが、タイで味わえるメード・イン・ジャパンのビールはオリオンしかないという品質は強みになる」とアピールする。これまでも県人会や邦人市場向けにタイにも出荷していたが、賞味期限切れの不良在庫を抱えるなどの状況があり流通は停滞していた。

 今年に入り、オリオン外販部で韓国出身の田受燕(じょんすよん)さんがタイの営業担当となり営業展開の立て直しを図っている。田さんは「生活水準が上がってきて、高くても良いものを求める人が増えている。外食文化のタイで、まずは飲食店を中心に攻める」と語る。

 グリコのお菓子や日本酒メーカー大関など、日本製品のタイ国内での流通卸を手掛けているタナワット・インダストリアルがオリオンビールの輸入・販売代理店となり「SHINSEN」などの飲食店や小売店への営業を展開している。

 祖父の代に興したタナワット社の経営を担うヴォラモン・ナオヴァラタノハスさん、ヴォラピン・ナオヴァラタノファスさんの姉妹は「日本の中でも沖縄は新しいイメージで、多くのタイ人にとって行きたい人気の場所になっている。お酒でも、桜の絵が描かれているような特別感のある商品を好む」とオリオンの浸透に太鼓判を押す。

 ホテルも含めて販売店は60店舗ほどに広がりを見せる。小売店でも、日系スーパーのイオンタイランドが9月からバンコク市内のマックスバリュでオリオンビールの取り扱いを始めた。現地の高級スーパー「グルメマーケット」、コンビニのファミリーマートの店頭にも並び始めている。

 田さんは「バンコクとの直行便開通が重なったのが大きい。タイでも『オキナワ』『オリオン』で通用するようになってきた。沖縄でナンバーワンのビールとして紹介していく」と市場開拓へ意欲を見せた。