障がい者の戦 継ぐ 上間祥之介さん 「当事者視点大切に」卒論で証言集め


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「県史各論編6 沖縄戦」の障がい者の沖縄戦体験についてのページを開く上間祥之介さん=南風原町立中央公民館

 【南風原】沖縄国際大学総合文化学部社会文化学科4年で平和学を専攻する上間祥之介さん(22)=南風原町=が、障がい者の戦争に関する証言を集めている。「障がい者の戦争体験」をテーマに卒論に取り組んでおり、これまでに4人の証言を得た。「健常者に比べると障がい者の体験に関する記録はまだまだ少ない」と指摘する上間さん。「障がい者の体験も戦争体験としてしっかり語り継いでいくために、少しでも多くの証言を聞きたい」と体験者に呼び掛けている。

 上間さんは脳性まひのため、子どもの頃から車いすを利用している。家族や友人、教師らに支えられながら北丘小学校、南風原中学校、南風原高校を卒業した。学校では毎年、沖縄戦の学習をした。「たくさんの戦争体験を聞いてきたが、障がい者の体験は聞いたことがなかった。当時も間違いなく障がい者はいた。自分のような人は当時どうしていたのか」。卒論のテーマ設定の動機となった。

 今年3月に発刊された「沖縄県史各論編6 沖縄戦」では、過去にまとめられた障がい者の証言記録が紹介された一方、「全体像を理解するにはあまりにも残された証言が少ない」と指摘されている。

 証言数の少なさについて上間さんは「戦争を進める上で邪魔者扱いされやすい障がい者は、老人や子どもと同じく社会的弱者で一番犠牲になりやすかったことと、差別されてきたこともあり、本人が語りやすい状況になかったことも影響している」と考える。

 これまでに視覚障がいのある2人、聴覚障がいのある1人、足が不自由な1人の証言をまとめた。「障がい者の中でも、肢体不自由児の証言が少ない。もっと多くの人の証言をまとめたい」と感じている。

 大切にするのは、当事者の視点だ。「障がいがあると、普段の生活でも難しいことが多くある。戦争中は周囲も生きることに一生懸命。その中で生き延びることができたのは、周囲の人の理解と協力があったからだと思う」

 「このテーマを僕のライフワークにしたい」と語る上間さん。「多くの声を拾わなければ全体像は分からない。本人だけでなく親戚の証言なども貴重だ。ぜひ聞きたい」と呼び掛けた。情報提供は上間さん(電話)090(6858)5190。(半嶺わかな)