辺野古・県民投票で賛否 承認撤回に「有効」 知事選同日「遅い」


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 沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設の是非を問う県民投票を来年11月の県知事選と同日に実施する案が県議会与党から浮上していることを受け、賛否両論の指摘が出ている。賛成の立場からは、知事が辺野古埋め立て承認を撤回する根拠になるとして「撤回理由に最も有効」との声が聞かれる。一方、反対の立場からは来年秋までにさらに工事が進むとして「遅い」「一日も早い撤回が必要」と指摘した。

 県民投票に関する県議らの勉強会で講師も務める新垣勉弁護士は、撤回の根拠について「県民投票が一番有効だ」と強調する。知事や県議らが条例案をすぐに県議会に提案する形ではなく、住民からの直接請求の手順を踏んだ方が意義が広がるとして「下から運動をつくっていける」との見方を示した。沖縄防衛局が示した計画で5年を要する工事期間を念頭に撤回は来年秋でも「冷静に見ると十分に間に合う」とも語った。

 「辺野古県民投票を考える会」の元山仁士郎さん(26)は「県民投票をせずに撤回して訴訟になれば、最高裁が翁長雄志知事の取り消しを『違法』とした時と同じ結果になってしまうだろう」と過去の訴訟の二の舞いを懸念し、県民投票に賛成する。

 行政法が専門の成蹊大学法科大学院の武田真一郎教授も「今、撤回しても工事は1週間しか止まらない。政府は代執行という強引な手続きを取る可能性がある」と強調した。

 一方、県民投票を実施する時期や効果を疑問視する声も上がる。1997年に名護市民投票推進協議会の代表を務めた宮城康博さん(58)は県民投票について「(住民の)直接請求しか(方法が)ないかのように新聞が報じているのはおかしい。県民投票は議員が提案できる」と指摘する。「知事選まで引っ張るなら、それまで何もしないことになる。何を悠長なことを言っているのか。署名を集めてからではなく、すぐ(県民投票条例を)提案できる」と断じた。

 元裁判官でうるま市島ぐるみ会議の仲宗根勇共同代表も「来年11月までに護岸ができ、土砂は投入され、一部は完成する可能性がある。この種の裁判は経済的合理性が優先される。いかに撤回理由が重くとも、工事が進むほど裁判で勝てる可能性は低くなり、補償金額も膨らむ」と指摘する。「県の岩礁破砕許可期限が切れたにもかかわらず工事を進めていることなど、撤回できる理由はたくさんある」と翁長知事の撤回判断が遅いとして批判した。