歓待の心 大事に 首里の元喫茶店主・長嶺さん 外国人客と言語超え交流


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 外国人観光客に親しまれた喫茶店が昨年の暮れに店を閉じた。那覇市首里の龍潭通り沿いにあった店の主・長嶺美枝子さん(62)は、滋養ある手料理と「うとぅいむち(おもてなし)」を観光客に提供した。しかし、話せる言葉は日本語とうちなーぐちのみ。外国人観光客にも日本語とジェスチャーで渡り合った長嶺さんは「英語が話せなくても大丈夫。大切なのは話し掛けること」と周囲に「ウェルカムンチュ」になるよう呼び掛けている。

外国人観光客が書き寄せたノートを手にする長嶺美枝子さん。後ろにある看板はシンガポールからの旅行客が作ってくれた=12月、那覇市首里

 龍潭通り沿いに店を持とうと思ったきっかけは、高校生時代に通い詰めた喫茶店「白磁苑」があった場所だったからだ。思い出の場所に店を構えると、外国人観光客が目的地が分からずに迷っている姿をよく見かけた。「あなた、どこ行きたいの」。迷える観光客をつかまえては、自然と話し掛けていた。

 観光地を見学する間に荷物を預かったり、お金が無い観光客にはケーキ代でランチを提供したりした。訪れた記録を1冊のノートに書いてもらった。約2年半に書き込んだ人は68人で、国籍はシンガポール、アラブ首長国連邦など15カ国に及ぶ。「この店は沖縄料理と優しさを提供してくれる」「困った時に助けてくれてうれしかった」「また来たい」-。寄せられた言葉には長嶺さんの人柄を表す言葉が並ぶ。

 家庭の事情で店を閉めることになったが、ノートは今でも宝物だ。「当たり前だと思ってしてたけど、こうして喜んで、(その思いを)記録に残してくれる。私の財産だ」と話す。

 閉店しても、人との交流は終わるわけではない。気に掛かる外国人観光客がいれば、変わらず声を掛けてみるつもりだ。「言葉が通じないからとためらわないでほしい。話し掛ければ誰もがウェルカムンチュだ」と強調した。