「琉球人遺骨返還を」 東アジア研究会が声明


この記事を書いた人 琉球新報社
日本の植民地主義や中国・北朝鮮脅威論について議論する研究者ら=27日、西原町の琉球大学

 東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会は27日、西原町の琉球大学で、シンポジウム「日本の植民地主義と中国・北朝鮮脅威論を問い直す」を開いた。研究者やジャーナリストが、琉球併合(琉球処分)から現在の米軍基地問題に通じる日本の植民地主義について論じた。

 昭和初期に旧帝国大学の人類学者らが持ち出した琉球人の遺骨が、京都大学などから返還されていない問題について、遺骨に関する情報公開や遺骨の返還・再埋葬、謝罪などを求める声明文も発表した。

 松島泰勝龍谷大教授は琉球人遺骨問題について、先住民族の権利に関する国連宣言を挙げて「国際法上の問題だ。琉球人は日本によって領土が奪われただけでなく、遺骨も日本人研究者によって盗掘され、返還されていない」と批判。アイヌ遺骨返還訴訟と同様に、訴訟によって返還を求めることも視野に入れて活動することを強調した。「琉球人は自己決定権によって遺骨を返還させることができる」と述べた。

 島袋純琉球大教授は、大阪府警機動隊員による「土人」発言について「発言は人権侵害、構造的差別、暴力を正当化するものとして作用する。戦争は差別によって正当化される」と警鐘を鳴らした。前田朗東京造形大教授も登壇した。

 ジャーナリストの屋良朝博さんらは「中国・北朝鮮脅威論の虚妄性を問う」と題して報告した。脅威を強調する安倍政権を批判し「沖縄戦を繰り返さないために、沖縄をバッファゾーン(緩衝地帯)にすべきだ」と強調した。

【声明文要旨】
 京都大学総合博物館に所蔵されている「百按司(むむじゃな)墓遺骨」の持ち出しは、門中(琉球の親族関係)関係者、地域住民などの了解を得たものではなかった。

 「先住民族の権利に関する国際連合宣言」第12条は、先住民族が遺骨返還の権利を有していることを明記している。2008年以来、国連の諸会議において琉球人が先住民族であると認められてきた。

 遺骨は日本政府による琉球の植民地化過程で奪われたのであり、人間としての尊厳や権利が大きく損なわれた国際的な人権問題だ。琉球人に対する冒涜(ぼうとく)行為への謝罪を強く要求する。

 研究会は琉球人・アイヌ遺骨返還に見る日本の植民地主義に強く抗議するとともに、同遺骨に関する完全な情報の公開そして遺骨返還、再埋葬を要求する。

 東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会