程順則 300年前の献上杯 京都陽明文庫に保存


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程順則が約300年前に江戸時代の公家・近衛家煕に献上した杯「孔林楷杯」(京都市の陽明文庫所蔵)

 久米村生まれの儒学者・程順則(ていじゅんそく)(名護親方)が、江戸時代の公家・近衛家煕(このえいえひろ)に献上した杯「孔林楷杯(こうりんかいはい)」などが京都市の公益財団法人陽明文庫に約300年間保存され、現存していることが分かった。県教育庁が9日、発表した。保存されていたのは杯のほか、それにまつわる漢詩、また程順則や政治家の蔡温が近衛家別邸の「物外楼(ぶつがいろう)」に寄せた書である「物外楼記」。

 近衛家煕は、近衛家21代当主で博学、多芸で知られる。「孔林楷杯」は1715年、程順則がかねて交流のあった近衛家煕に贈ったもので、「程氏家譜(ていしかふ)」などの文献の記述から、その存在は知られていた。今回の発見について、県教育庁文化財課史料編集班の外間みどり主幹は「当時の一流の文化人である近衛家煕と、程順則や蔡温との緊密な文化交流の様子をうかがうことができる」と意義を説明した。
 楷杯は横26センチ、縦21・5センチで、内側に金泥が塗られている。「楷盃記」2巻、「物外楼記」2巻と共に保管されていた。
 孔林とは中国山東省曲阜(きょくふ)にある孔子一族の墓地で、楷杯はそこにある楷の木の根元の部分で作られた杯。程順則は1706年の進貢使節で北京に向かう途中で曲阜に立ち寄っており、楷杯はその時に手に入れたとの記録がある。
 県教育庁は今後、陽明文庫の協力も得ながら、詳細な調査や県内での展示を検討していく。問い合わせは、県教育庁文化財課史料編集班(電話)098(888)3939。