「平和のバトン しっかり」 ひめゆり平和祈念資料館、館長交代へ


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 ひめゆり平和祈念資料館の島袋淑子館長(90)が今月末で館長を退任し、後任に戦後世代で副館長の普天間朝佳さん(58)が就任する。島袋さんに資料館に懸けた思い、普天間さんに受け継ぐ決意を聞いた。(聞き手 中村万里子)


島袋淑子館長 戦争駄目 訴え続けて
 

島袋淑子館長

―自身にとってのひめゆり資料館とは。

 「私たちは戦後、亡くなった友達にすまない、生きていていいのかといつも悩んでいた。そういう時に資料館を建てた。亡き友や戦争のことを知ってもらおうと無我夢中で準備をした」

―悩みは軽減したか。

 「開館の日、遺族に何と言われるか心配だった。展示を見た遺族から『ありがとう。生きていてくれてありがとう。今まで分からなかった娘のことが分かったよ』と言葉を掛けられ、私たち生きていいんだ、と思うようになった。でも説明の途中で泣いて話せなくなってしまうこともあった」

―普天間さんや若い世代に受け継いでほしいことは。

 「戦時中、戦争は正しいと思っていた。でも上陸が始まったら毎日血まみれ、想像を絶する日々だった。体験したら戦争が間違っていると気が付いた」

 「私たちの理念は戦争はむごいものでやってはいけないということだ。多くの人の命を奪い、人間が犯す最大の過ちが戦争だ。『戦争は駄目』と訴え続ける必要がある。そのことを若い職員はしっかり受け止めている。私たちがいなくても継続していくことができると信じている」


普天間朝佳さん 命の尊さ感じる場に
 

普天間朝佳さん

―島袋館長の退任をどう思ったか。

 「戦争体験者の存在の大きさと発信力をそばで見てきた。でも90歳になる。これ以上お願いする訳にもいかないと思った」

 「ユダヤ人大量虐殺のあったアウシュビッツ強制収容所跡に行った。そこでは体験者ではない人が説明していたが、とても伝わってきた。やらないといけないという気持ちになった」

―若い人たちに沖縄戦をどう伝えていきたいか。

 「若い人たちは、話を聞いて展示を見てという受け身的なやり方では自分事にならない。風化の反対は心に刻むこと。自分のこととして受け止め、考えてもらう方法は必要になる。海外の取り組みとも連携したい」

―どのような資料館にしていきたいか。

 「これまでと同様、沖縄戦を具体的に知り、平和の大切さ、命の尊さを心の中にとどめておけるような場所にしたい。戦争は絶対起こしてはいけないという気持ちを持ってもらえる場所であり続けたい」