比嘉大吾、無期限停止処分 ボクシング界の“常識”転換期に 厳罰にも救済の道残す 


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1回目の計量で900グラムオーバーした比嘉大吾(左)に声をかける具志堅用高会長=14日、東京都内のホテル(大城直也撮影)

 日本ボクシングコミッション(JBC)が比嘉大吾に下したライセンス無期限停止処分は、体重超過が相次ぐ現状に自浄作用を促す厳しいものとなった。一方で、処分停止解除の条件や次戦に望む際の「階級変更命令」を付して救済の道も残した。今回の処分には“見せしめ”的な印象もあるが、JBCによる比嘉への配慮もうかがえる。

 国内での体重超過は昨年は10件。今年は4月15日時点で6件と急増し、ボクシング各界でも急速に危機感が高まっていた。特に3月の世界戦で大幅な体重超過があった外国人選手が猛烈な批判を受けただけに、比嘉への処分について「厳罰は避けられない」との見方が出ていた。

 ボクシング界では体重超過があっても、試合を見たいファンとその期待に応えたい選手、興業を成功させたいプロモーターの思惑で階級制度がないがしろにされてきた部分がある。ハードルの高い減量をパスした後に設定階級より大幅に体重を増やす調整方法も、戦略とみられてきた。そのようなボクシング界の常識や曖昧さは転換期を迎えそうだ。

 連続KO勝利という強さにひょうきんな性格も相まって人気を集めた比嘉。減量のつらさも、試合間隔の短さも乗り越えて勝つだろう、という期待はファンだけでなくメディアにもあった。減量失敗はボクサー失格という意見は当然だが、事後の批判や制裁ではなく、もっと早くに問題ある慣習の是正に取り組んでいれば、違った結果になったかもしれない。(嘉陽拓也)