ハンセン病 沖縄県、回復者支援へ 当事者と意見交換 課題、現状把握図る


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 ハンセン病療養所を退所し、地域社会で暮らす回復者や家族らの生活支援のあり方を考えようと、沖縄県が回復者らと6月6日にも意見交換することが31日、関係者への取材で分かった。ハンセン病問題の啓発活動などを行う県ゆうな協会と退所者がつくる「沖縄楓(かえで)友の会」が開く定例会議に県地域保健課の職員2人が出席する。課題解決に向けて動き始めた形だ。

 これまで県が退所者の現状について当事者の話を聞く機会はあまりなかった。意見交換を通じて、課題や悩みなどを直接聞き、現状把握を進めて解決策を探る。県地域保健課の担当者は「県としてできる支援があるのか、地域で暮らしている方の意見を聞きたい」と話した。

 県内には沖縄愛楽園(名護市)と宮古南静園(宮古島市)の二つの療養所がある。ことし1月、退所者らは新たに「沖縄ハンセン病回復者の会」(平良仁雄、知念正勝共同代表)を立ち上げた。

 同会は5月8日、県に対して、回復者と家族が地域で暮らし続けられるよう、医療や介護体制の整備などを求める要望書を提出した。県保健医療部の砂川靖部長は「県としても膝を交えて話し合う機会を設けたい」と前向きな姿勢を示していた。回復者の会との協議に向けた前段階として、まず定例会議に担当職員が参加する。

 2017年7月現在で、厚生労働省が把握する県内の退所者は473人。入所歴のない人は64人いる。一方、回復者の会によると、家族にも過去を隠しているため名乗り出られない退所者も含めると県内には約千人いるという。

 病歴の発覚を恐れて地域の病院に行けずに後遺症を悪化させたり、高齢化が進み、地域から孤立してしまったりという問題も生まれている。共同代表の平良さんは「回復者が苦しむ現状を具体的に説明したい」と話した。
 (佐野真慈)