政治

ジュゴン訴訟 民主主義に期待 実質審理、判事は熟考姿勢 「米裁量権」か「地元との協議」か

 「法の趣旨にのっとり、意思決定に地域住民との協議が必要であることを明確に説明できたと思う」

 絶滅危惧種ジュゴンを守るため、日米の環境保護団体が米国防総省を相手に名護市辺野古の新基地建設工事の差し止めを求めたジュゴン訴訟。2003年の提訴後、初めての実質審理となる差し戻し審の公開審理が6月28日、関係者が見守る中、米サンフランシスコ連邦地裁で開かれた。結審後、原告代理人のサラ・バート弁護士(環境法律保護団体アースジャスティス)はほっとした表情を見せ、手応えを語った。

■二重基準

 工事がジュゴンに与える影響について、国防総省が米国家歴史保存法(NHPA)に基づいて地元関係者と協議するなど「考慮する」手続きの要件を満たしていたかどうかが争点だ。

 原告団によると、米国外で適用される同法の402条について争う訴訟は史上初。国内で適用される106条と異なり、402条には手続きの過程における「協議」などの詳細は規定されていないが、双方とも事業が与える影響について「考慮する」手続きを定めている。このため原告団は「考慮する」内容として「協議」を402条にも適用すべきだと主張した。

 バート氏は「法の下、米政府は地域社会との協議が義務付けられている。例えば、政府がハワイの聖地に基地を造る際、『ハワイ先住民と話し合うつもりはないが、ハワイ大学の人類学者と協議する』と言っているようなものだ」と、国防総省の二重基準を指摘する。

 県や地域住民との協議が行われていない上、同省が有識者らに対して聞き取りを実施したジュゴンの文化的価値調査は基地建設の影響について触れていないと、手続きの不備を指摘した。

■重なる日米の姿勢

 これに対し、国防総省代理人のマーク・ハーグ弁護士は「日本政府や委託したコンサルタントを通じて地元関係者と協議した」「沖縄県教育委員会とも協議した」と、手続きの正当性を主張。402条の解釈は国防総省に裁量権があり、原告が要求する地域社会との協議は「要件」ではないと繰り返した。だが、エドワード・チェン判事に具体的な協議内容を質問されると、「日本政府との同盟関係があり、外交問題に関わる」と言葉を濁した。「同盟関係」を理由に、地域社会への説明を避ける姿は日本政府と重なった。

 チェン判事は15年2月、同訴訟を日米両政府の「政治的問題」と国防総省側の主張を受け入れ、訴えを棄却した経緯がある。だが、今回の審理は1時間半にわたり原告、被告双方に積極的に質問し、熟考する姿勢が見られた。

 国防総省による「裁量権」や「外交問題」の主張を認めるのか。それとも、新基地建設は「ジュゴンに悪影響を与えない」とする国防総省の現行手続きと結論を違法とみなし、米国内と同様の地域社会との協議を求めるのか。判例のない402条に対するチェン判事の判断が注目される。

 審理前の集会でマイクを握って「沖縄を返せ」を歌った原告の真喜志好一さんは「裁判所の敷地内でこうやって歌い、踊り、集会を開ける米国の民主主義に期待したい」と判決に望みを託している。