サンゴ群体、予定海域に 防衛省、移植対象外と主張 新基地土砂投入まで1ヵ月


この記事を書いた人 大森 茂夫
サンゴとみられる群体=13日午後2時ごろ、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古での新基地建設を巡り、沖縄防衛局が県に通知した土砂投入の開始日まで、17日で残り1カ月となった。大浦湾・辺野古の海域は、5300種以上の多様な生物が確認される豊かな海だ。絶滅危惧種のジュゴンは国が海上で作業を始めてから姿が確認されなくなった。埋め立て予定地内では大型のサンゴが発見され、識者は移植が必要だと指摘する。ジュゴンの餌で、小さな生物のすみかとなる海草藻場は、県が移植を求めているにもかかわらず、国は移植せずに埋め立てる姿勢を示す。土砂投入が目前に迫る中、環境保全の観点で多くの問題点が浮かび上がっている。

辺野古崎の護岸工事現場近く、埋め立て予定海域に存在するサンゴの群体=13日午後2時ごろ、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設の予定地内は、大型のシコロサンゴの群体が確認されている。琉球新報社は16日までに、小型無人機で撮影した。防衛省は死んでいる部分があるため、移植が求められる直径1メートルに満たないとして移植対象ではないと主張する。一方識者からは、基準が一貫していないとの指摘が上がっている。

 シコロサンゴは、埋め立て予定地のN3護岸付近にある。付近には他にも、大型のハマサンゴが存在しているが、国はいずれも移植対象ではないとする。

 これらのサンゴは市民が1月に発見し、移植の必要性を指摘した。これを受けて、防衛省は6月に潜水調査を実施。サンゴの被度が5%以下で、上部がほとんど死んでいると結論付け、移植しない方針を示した。

 防衛省の方針に、日本自然保護協会の安部真理子主任は「国が移植を決めたサンゴの中にはすでに死んだものも含まれており、基準が統一されていない。見落としていなかったと言いたいがための調査だったのではないか」と指摘する。

 「そもそも日本サンゴ礁学会は、サンゴを大きさで区切って移植するかどうか判断すること自体がおかしいと考えている。一般的な常識に照らしても、移植すべきだ」と対応を批判した。