パイン普及へ新技術 美ら島財団 「メリクロン増殖」開発


この記事を書いた人 琉球新報社
無菌室で育てられる増殖したパイナップルの苗=本部町の沖縄美ら島財団

 沖縄美ら島財団(本部町)は、強い甘みが特徴のパイナップル品種「ゴールドバレル」の苗を短期間で大量に増やす「メリクロン増殖」技術を開発した。パイン苗を増やすには長い時間が必要で、新品種が一般に普及するには10年近くかかる。技術を使うことで優れた新品種を早く農家に普及することができ、農業振興につながると期待されている。

 キクやイチゴなど苗が増えやすい植物と異なり、パインの苗は増殖に時間がかかる。通常、1株のパインから年間10~15株の苗が取れるが、メリクロン増殖技術を使うと10株を2年間で約1万株ほどに増やすことができる。

 沖縄のパインは、全国一の生産量を誇り、県内の果樹でも主要な品目だ。県は新品種の開発に力を入れ、海外から品種も導入されてきたが、苗が増えにくいために普及が進まなかった。

パイナップル苗の増殖過程を説明する沖縄美ら島財団の佐藤裕之研究員(主任)=23日、本部町の同財団

 ゴールドバレルのメリクロン増殖技術は、美ら島財団の総合研究センター植物研究室の佐藤裕之研究員が開発した。パインなどの熱帯果樹には、眠った状態の芽が多くあり、調整した栄養成分で芽を覚まして成長を促した。芽を入れるフラスコ内は、パインの苗だけが増殖できる条件をつくる。佐藤研究員は「カビを生やさないように『無菌化』した環境で、パインの苗だけを増殖させなければならない」と難しさを説明する。

 さらに栄養に恵まれたフラスコから外部に出す際に、苗を外の空気に慣れさせる「順化」も技術研究のポイントだ。芽を取って4~5年で収穫でき、2016年度には財団関連会社の沖縄美ら島ファームで収穫が始まった。

 佐藤研究員は「今後もパインの新品種に応用できる技術。より早く農家に普及し、農業や地域産業の振興に貢献できれば」と語った。