沖縄の子ども 低い「行事参加」「自然観察」 大人の関わりの薄さ露呈 全国学力テスト


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 文部科学省が31日、発表した全国学力・学習状況調査(全国学テ)のうち、学校と児童生徒に学習状況や取り組みを聞く質問紙では、県内は「地域の行事に参加している」とした小6が22・9%と全国より低く、小学生の質問紙の中で最も大きい13・0ポイントの差がついた。「自然の中で遊んだり自然観察をしたことがある」と答えた小6は59・6%、中3は41・6%で全国より7~8ポイント低かった。「豊かな自然」「地域のつながりが強い」といった“沖縄イメージ”に反して、子どもたちの活動は全国より活発ではない傾向が表れた。

 「(兄弟姉妹を除く)家族と学校の話をしている」と答えた小6は45・5%で、長時間を過ごす学校での出来事を家で十分に話していない児童が半分以上おり、全国より7・3ポイント低かった。中3では38・0%で全国より6・7ポイント低かった。

 これらの項目は、いずれも家族や地域の大人の関わりが必要な活動だ。県の子ども調査で、県内の親は全国より非正規就労が多く、労働時間が長く、就労日数も多いことが明らかになっている。琉球大の長谷川裕教授(教育社会学)は「仕事に追われ、子どもに関わることができない親の姿が表れている」と指摘した。

 また3年に1度行われる理科の学力調査に関連して、別の教員や支援員が授業をする教員を補助する「観察実験補助員」がいるとした小学校は、全国14・7%に対して県内はわずか1・2%(3校)だった。中学校は全国4・4%に対して県内1・4%(2校)。県教育庁の担当者は「高校には同様の助手がいるが、小、中学校では聞いたことがない」と話し、市町村や学校が独自に配置しているとみられる。「ただでさえ教員は授業時数が多く、実験は準備から大変。手伝ってくれる人がいればとても助かる。実施校の内容を知りたい」と話した。

【解説】親の働き方改革必要

 全国学力・学習状況調査(全国学テ)に表れた結果は、平均正答率を含めほとんどの項目で都道府県間の差は数ポイントにすぎない。県内と全国との差が目立ったのは、就学援助率の高さに加えて「授業中の私語が少なく落ち着いている」(中)、「保護者や地域が学校活動に参加している」(小)といった項目での数字の低さだ。

 正答率との相関が強い項目では「授業で課題解決に向けて自分で考え、自分から取り組むことができている」とした小学校が11・9%、中学校は10・1%で、いずれも全国より約5ポイント低かった。どの項目も改善には丁寧な学級づくりや、学校にとどまらない親の働き方改革が必要で、目に見える「学力」以前にある子どもが学ぶ環境整備の重要性が浮かび上がる。その結果は、親の厳しい働き方などを明らかにした県の子ども調査とも一致する。

 忙殺される学校現場の厳しさはこれまでも指摘されてきた。本調査でも「前年度の結果を学校全体の教育活動に活用した」と答えた学校は県内、全国とも小学校で3~4割、中学校は2~3割にとどまった。学テに注目する大人たちが、教室内での教師の取り組み以上に、教室を取り囲む環境づくりに関心と熱意を注がなければ改善は難しいだろう。

 (黒田華)