県、辺野古埋め立て承認を撤回 「法基づき適正に判断」


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埋め立て承認撤回について説明する謝花喜一郎副知事(右端)と富川盛武副知事(右から2人目)=8月31日午後、沖縄県庁

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、富川盛武、謝花喜一郎両副知事は8月31日午後、県庁で記者会見を開き、仲井真弘多前知事による辺野古の公有水面埋め立て承認を撤回したと発表した。国は新基地建設を進める法的根拠を失い、海上の工事は中断する。翁長雄志知事の死去後に撤回の権限を引き継いだ謝花副知事は「辺野古に新基地は造らせないという翁長知事の思いをしっかりと受け止めた上で、公有水面埋立法に基づき適正に判断した」と述べた。

 沖縄防衛局が当初8月17日を予定していた辺野古海域への土砂投入は当面不可能となる。政府は、撤回の効力を止める執行停止などを裁判所に求める法的な対抗措置を検討している。県知事の最大の行政権限である撤回を実行したことで、国と県の対立は重大局面を迎え、辺野古新基地を巡って再び法廷闘争に入る。

 会見に先立ち、県の渡嘉敷道夫知事公室基地対策統括監、松島良成土木建築部土木整備統括監が嘉手納町の沖縄防衛局を訪れ、井上主勇(かずみ)調達部長に埋め立て承認取消通知書を手渡した。

 会見に臨んだ謝花氏は、撤回処分に対して防衛局から反論を聞いた聴聞手続きの結果として(1)事前協議を行わずに工事を開始した違法行為(2)軟弱地盤、活断層、高さ制限および返還条件など承認後に判明した問題(3)承認後に策定したサンゴやジュゴンなどの環境保全対策の問題―が認められ、撤回の根拠になったとした。

 謝花氏は「防衛局の主張の一部に理由があると認められるものの、総合的には主張に理由がないという(県総務部の)聴聞主宰者の意見を十分に参酌した。違法な状態を放置できないという行政の原理の観点から、承認取り消しが相当であると判断した」と述べた。

 撤回の時期について富川氏は「聴聞報告書ができた時点から総合的、慎重に判断してきた行政手続きの結果であり、政治的な判断は一切ない」と強調した。

 辺野古新基地建設阻止を公約とした翁長知事は、7月27日に埋め立て承認の撤回に踏み切る方針を表明した。しかし、防衛局の主張を聞く聴聞手続きの途中の8月8日、翁長氏が急逝する事態となった。それでも県は9日に聴聞を開催し、手続きの延長を求めた防衛局の訴えを退けて聴聞を終結した。20日には聴聞主宰者の県総務部から聴聞の報告書と調書が提出され、撤回を実行する条件が整っていた。