佐喜真氏公約発表 「未来づくり」強調 財源、手法に不透明感も


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<解説>

 30日の県知事選で初当選を目指す前宜野湾市長の佐喜真淳氏は公約で、「県民の暮らし最優先」をテーマに121項目の政策を掲げ「未来の沖縄づくり構想」だと強調した。米軍普天間飛行場の返還を「争点」と位置付け、一日も早い返還を訴える。「平和の象徴」として跡地への国連機関の誘致も掲げた。しかし、最大の争点である辺野古新基地建設への賛否は示さなかった。辺野古移設の是非を争点から避けたいとの印象は否めない。

 佐喜真氏は「県民所得300万円の実現と子どもの貧困の撲滅」「普天間飛行場跡地に国連機関誘致」などを重要政策に位置付けた。一方、政策実現に向けた財源や手法は不透明な点もあり、県民へのさらなる説明が求められる。

 公約では、子どもの保育料や給食費、医療費の無償化や待機児童ゼロなど、有権者が注目する政策を列挙した。観光分野では、入域観光客数1500万人、観光収入目標を1兆3千億円に設定。那覇空港第3滑走路の可能性も探るなど大幅に機能強化するとして、経済発展につながる沖縄のリーディング産業をさらに伸ばす施策も盛り込んだ。

 ただ、具体的な目標期限や数値などが明記されていない点もある。保育無償化などの財源については「国にあらゆる要求をする」と説明。米軍再編に関する再編交付金などを県が受給する考えを示した。名護市で前例があるが「個人給付に当たるのでは」と指摘する声もあり、妥当性が疑問視される。
 (仲村良太)

<会見一問一答>

 

 ―政策で辺野古に1行も触れていない。県民を二分する大きな争点だ。

 「先般、県が(埋め立て承認を)撤回した。政府と県の法廷闘争も考えられており、法的にどうなるのかを注視する。現在はこのスタンスでいきたい。ただし最も重要なのは普天間の固定化は避けなければならないということだ。一日も早い返還が原点だ」

 ―自民党県連は辺野古移設を容認した。推薦した公明県本は反対だ。維新は今選挙で民意が示されるという立場。3党で一致した結論は出さないのか。

 「原点が一番重要だというのは3党一緒だ。私どもが一番重要視するのは、いかに普天間の返還が早くなるか。あるいはその間の危険性除去と負担軽減だ」

 ―県民所得300万円や医療費の無償化を掲げているが優先順位と財源は。

 「一番重要なのは子育て環境の充実だ。医療費や給食費の無償化、保育料の無償化などが必要だ。県民所得も全国一低い。予算がいくら必要かはこれから精査する。山口県の事例で都道府県に対する再編交付金のようなものもある。財源確保を国に要請していきたい」

 ―どのような形を取れば普天間の返還が早くなるか。辺野古移設か。県外・国外移転か。無条件か。

 「普天間飛行場の返還は日米両政府が約束した事項だ。まず日米両政府は返還に向けたアクションプランが必要だろうし、日米政府との対話や交渉を通して一日も早い返還を望んでいると訴えることが重要だ」

 ―キャッチフレーズに対立から対話へという言葉を掲げている。基地問題を巡る分断や対立を生んだのは翁長雄志知事だと考えるか。

 「一概に翁長知事だとは言えないが、ここ数年は法廷闘争があり、県と政府が常に争っているイメージがある。私は言うべきところは言う。しかし協調するところは協調し、会話を通してさまざまな問題を解決するスタンスだ」

 ―翁長県政の問題点、批判すべき点は。

 「過重な基地負担を全国に発信したことは大きかった。だがバランスを欠いたというか、暮らし、医療、さまざまな事業には予算が伴う。例えば沖縄振興一括交付金はピーク時から570億余り減額された。その辺りは残念ながら結果が出なかったと思う」

 ―辺野古の埋め立て承認撤回で、もし知事になったら当事者となる。国と争うのか、争わないのか。

 「まず、どのような形で撤回に踏み込んだのか、法的なものも含めながら精査しないといけない。精査した上で今後の対応を考える」