英語ガイド、沖縄県が育成中止 地域通訳案内士 関係者、継続訴え


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 沖縄県は本年度から県地域通訳案内士の育成研修対象言語を縮小し、これまでにあった英語を省いた。県は英語通訳案内士の登録目標数をすでに達成したほか、供給と需要バランスなどを理由に、沖縄特例通訳案内士育成等事業計画(案)検討委員会を経て判断を下した。しかし一方、業界関係者から「欧米客の誘致を強化している県が英語通訳案内士の育成を取りやめたことは矛盾だ」と指摘されている。さらに識者は「沖縄は世界水準の観光リゾート地の形成に向けて質の高い通訳案内士の育成継続が必要だ」と訴えた。

英語通訳案内士のスキルアップ研修の一環として行われた空手講座=10月6日、豊見城市の沖縄空手会館

■目標大幅に達成

 県によると、今年10月末現在、県内に登録されている英語通訳案内士(全国通訳案内士と地域通訳案内士)は計283人で、県が2022年4月1日までに目標としていた140人を大幅に超えた。県の担当者は「英語ガイドは充足しており、市場の需要に十分応えられている」とし、本年度から新たな英語ガイドの育成研修を取りやめ、すでに英語通訳案内士の資格を有するガイドだけのスキルアップ研修を実施している。

■5割超資格使わず

 一方で、英語通訳案内士の目標を達成したものの、同資格を活用していない人が多いのが現状だ。県が17年に行った県地域通訳案内士の現状調査をみると、英語資格の5割超は通訳案内士の仕事を「行っていない」と答えた。

 背景には沖縄を訪れる外国人客の8割をアジア客が占め、欧米客が比較的に少ないためだ。英語ガイドへの需要も少なく、ガイドだけで生計を立てるのが難しいと指摘される。

 沖縄通訳案内士会のマーシュゆかり会長は「英語ガイドの人数が増えたことで、1人当たりの仕事には確かに影響があった」と現状を説明した。

 しかし「語学は短期間で修得できる知識ではなく、ここで育成を中断したら、若い世代への引き継ぎにギャップが生じるのではないか」と懸念を示した。

■欧米客誘致に備え

 ガイド関係の仕事に従事する宗像愛さんは「県は欧米客の誘致に力を入れているのに、英語ガイドを養成しないのは矛盾だと思う」とくぎを刺した。さらに「資格を活用しないガイドを養成しても無意味だ。これからガイドの現場力を底上げできる養成カリキュラムも必要」と求めた。

 沖縄特例通訳案内士育成等事業計画(案)検討委員会の委員長を務めた琉球大学の上地恵龍特任教授は「東南アジアにもたくさんの欧米人がいる。同地域にいる欧米人の誘致は十分に可能性がある」と話す。「世界水準の観光リゾート地を掲げる沖縄には語学人材の育成は大事だ。県は将来を見据えて英語通訳案内士の継続養成をしてほしい」と述べた。

 県は「英語ガイドのスキルアップをしっかりしていきたい。新たな英語ガイドの育成について今後関係団体の意見も聞きながら、柔軟に検討していきたい」とした。

 (呉俐君)