「ペットボックス」がペット生体販売を中止へ 運営するオム・ファムの中村毅社長 遅れる業界に一石 譲渡会普及の契機に


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 久緒
オム・ファムなどが主催するイベント会場内で開かれた犬の譲渡会=2018年12月

 ペットショップの「ペットボックス」を県内2カ所で運営するオム・ファム(北谷町、中村毅社長)は4月以降、ペットの販売をやめ、ペットフードや関連商品の販売に特化する。動物愛護管理センターで殺処分を待つ犬や猫を新たな飼い主が迎え入れ、育てる文化を沖縄に根付かせたいとの思いから、中村社長が決断した。

 オム・ファムは現在、那覇市と北谷町の「ペットボックス」で犬と猫を販売している。両店の敷地内入居する別会社のペットショップは生体販売は続けるが、北谷店で2020年度以降に予定している全面改装後は、販売をやめる方針だ。

 オム・ファムは「不幸な犬や猫を産まない社会をつくる」を企業理念に掲げる。これまでも飼い主に対する啓発イベントや、犬や猫の新たな飼い主を探す譲渡会を開催してきた。センターから犬猫を引き取って飼育する保護団体への寄付も率先してきた。

 販売の際は、飼い主の適性を確認するほか、子犬を繁殖させてペットショップに卸すブリーダーにも面接を課すなど、「健全販売に務めてきた自負がある。

中村毅さん

 中村社長は日本のペット業界は、生体を売らない世界基準から遅れているとの思いを持っていた。「生体販売をやめたからといって殺処分がゼロになるわけではないだろう。限界はある」としつつも「業界を動かす気持ちで、次のステージにいきたい」と意気込んだ。

 中村社長の決断は保護団体からの反響も大きい。ワン’sパートナーの会の比嘉ゆかり事務局長は「売る側での取り組みは画期的だ。譲渡会を知るきっかけになってほしい」と歓迎する。一方で「捕獲数は減っているものの、依然として多い。犬猫を捨てる飼い主がいるからだ。犬猫を家族として最後まで飼う意識が必要だ」と訴えた。

ペット、大半は業者から 殺処分減 飼い主の意識が鍵

 動物愛護管理法に基づきペットショップなど販売業者が県動物愛護管理センターに届け出た2017年度の販売や引き渡し件数は、犬が5950頭、猫が385頭だった。

 一方、センターからの譲渡数は犬が589頭、猫が181頭にとどまり、県内の犬や猫の多くがペットショップで引き渡されている現状が浮かび上がる。殺処分数は、犬は16年度の413頭から17年度は153頭と大幅に減った。しかし、猫は759頭から1056頭に増えた。

 殺処分を減らすため、福岡市は18年4月からペットショップの認定制度を始めた。飼い主に最後まで飼うと誓約させることや、マイクロチップを装着した犬猫のみを販売すること、収容センターや保護団体から犬や猫を引き取るよう案内することなど市独自の基準を設けた。

 沖縄県の担当者は他事例を参考にしつつ「まずは飼い主の意識を高めなければいけない」と強調する。狂犬病の予防接種率は50%と横ばい状態で、全国最下位が続く。放し飼いをしないことや市町村への登録、狂犬病予防注射は法律で義務付られている。担当者は「当たり前のことを徹底してほしい。ちゃんと飼えば殺処分は減る」と呼び掛けた。