宮崎氏解釈を疑問視 法専門家「予算執行は義務」


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宮崎政久衆院議員(比例九州)

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、自民党に所属し弁護士資格を持つ宮崎政久衆院議員(比例九州)が市町村議員に配布した資料で指摘した内容に対し、行政法の専門家からは疑問の声が上がっている。一方、自民党県連は16日にも記者会見を開き、宮崎氏の資料について経緯を説明する。

 資料の中で宮崎氏は、議会で予算が否決された場合に市町村長は「経費を支出することができる」という地方自治法177条の規定に触れている。この規定で市町村長は原案を執行することが「できる」のであって「議会で予算案が否決された事実を前に、これに反して市町村長が予算案を執行することは議会軽視であり、不適切である」としている。

 この見解について行政法が専門の井上禎男琉球大学法科大学院教授は「地方自治法177条の枠だけで、市町村長の判断を正当化することはできない」と指摘する。

 井上教授は「県民投票条例13条や地方自治法252条17の2を踏まえると、177条の解釈としては予算は義務的な執行と解釈せざるを得ない」と述べ、宮崎氏の解釈を否定した。「ほとんどの法学者は同様の意見だろう」とも指摘した。

 県民投票条例13条は、地方自治法252条17の2に基づき「市町村が処理することとされた事務は、市町村長が管理し執行するものとする」と規定している。これに基づき県は投開票事務を市町村に移譲した。

 しかし、5市長が事務を執行しない態度を示している。井上教授は「県民として投票の権利を『行使させない』という責任は重い。いわゆる『投票権を奪う』ことに対し責任を負うことができるのか、説明責任を果たすべきだ」と批判した。

 また、行政法の解釈に政治的な判断が入っていると指摘した上で「個別の法令解釈が問われている状況に、総務省は対応すべきだ。それを放置しているのは怠慢だ」と強調した。

 宮崎氏は先月上旬、「県民投票条例への対応」や「地方自治法の解釈について」と題した資料を作成し、市町村議員に「県民投票の不適切さを訴えて、予算案を否決することに全力を尽くすべきである」と呼び掛けていた。