社会

千葉小4女児死亡で母親逮捕 〔識者談話〕DVの本質理解を

矢野 恵美(琉球大法科大学院教授)

◆社会全体で議論を/矢野 恵美(琉球大法科大学院教授)

 夫から妻へのドメスティックバイオレンス(DV)の情報は糸満市にも寄せられており、千葉県野田市へ転居後に小学校の担任が女児から聞き取ったメモには「おきなわでは、お母さんがやられていた」との記載もあった。妻も子どもと同様、被害者だ。DV加害者が暴力を振るわない時期があったとしても一時的なもので、暴力のサイクルを繰り返しながらエスカレートしていく。被害者は自主性を奪われ、逆らえなくなる。傷害を共謀したと言えるとは到底思えない。

 夫による子どもへの暴行を制止しなかったことが、共謀に当たると判断されたというが、母親は自分の命に代えても暴力を止めるべきという母性幻想が根底にありはしないか。悪いのは夫であり父である加害者だ。

 これまでも司法がDV被害者に冷たい判断をすることがあったのは事実だ。虐待事案ではないが、夫の犯罪行為を手伝わされたDV被害者が共犯として有罪判決を下された例もある。法曹の中にも「大人であっても逃げられない」という、DVの本質を理解してくれない人もいる。

 加害者の支配から抜け出せず、関係を断ち切れずに戻ってしまうことはDVではよくある。妻を責めるのは筋違いだ。妻の逮捕によって、この事件が家庭内の問題だと矮小(わいしょう)化されてしまわないかと懸念している。DVも児童虐待も社会全体の問題だ。疑いがあれば公的機関が積極的に介入し、保護するべきだ。そのための教育や人員確保もお願いしたい。
 (被害者学、ジェンダー法)