政治

沖縄県、訴訟取り下げ言及 安倍首相、工事中止明言せず 知事・首相会談

会談前に沖縄県の玉城デニー知事(左)と握手する安倍首相=19日午前、首相官邸

 玉城デニー沖縄県知事は19日に官邸で行われた安倍晋三首相との会談で、上告中の辺野古海域の岩礁破砕を巡る訴訟を取り下げる考えを伝えた。辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問うた県民投票で示された反対の民意を背に、異例の頻度ともいえる今月2回目となった会談で、まずは県側から“譲歩”のカードを出した。同時に工事をいったん中止するよう安倍首相に再考を迫ったが明確な回答はなく、土砂投入が止まるのかは不透明なままだ。

■寝耳に水

 上告取り下げの一報を受け、玉城知事を支える県政与党には戸惑いが広がった。「聞いていない」。政府から埋め立て中止を勝ち取れる担保のない上告取り下げに、驚きを隠さない県議もいれば、「県民投票で埋め立て反対の民意が明確となり、岩礁破砕訴訟でプラスに働く可能性があるのに、なぜ取り下げるのか」「容認できない」と眉をひそめる県議の姿もあった。

 事前通告がなかったことに不信感を募らせた与党3会派の代表者らは19日夕、謝花喜一郎副知事を呼んで経緯の説明を求めた。謝花副知事は「昨年から弁護士と協議し、知事も上告を取り下げた方が良いと考えていた」と明かしたが、与党幹部は「我々の後ろには県民の闘いがあり、世論があり、選挙がある。重大なことを、なぜ相談しないのか」と反発した。

 これに対して謝花副知事は、19日の玉城知事と安倍首相との面会が急きょ18日午後に決まり、与党に方針を伝達しようとした19日朝にはジュゴンを巡る対応に追われて事前説明ができなかったと釈明した。その上で「県の埋め立て承認撤回を巡る主張は全く揺るがない」と理解を求め、「今後は意思疎通をしっかりやりたい」と約束した。これに与党も辺野古埋め立て阻止に向けて協力していくことを誓い、この場を収めた。

■漂流

 訴訟合戦を避けたい考えを示した玉城知事の狙いを、政府関係者は「(県敗訴の)結果が見えている裁判を取り下げても、県が失うものはない。首相が対話に応じないことを目立たせるカードとして使った方が有効だと判断したんだろう」と推測する。

 会談を経ても、玉城知事の思惑通りに政府側が要求に応じて立ち止まる気配はない。19日の参院外交防衛委員会で、工事を中止すべきだとの質問を受けた岩屋毅防衛相は語気を強めるように、「この問題が仮に再び漂流するということになれば、普天間飛行場は間違いなく固定化する」と答弁した。行き着く先が辺野古移設か普天間固定化しかないとの考えを色濃くにじませた。

 ただ菅義偉官房長官は同日の会見で、25日にも政府が予定する新たな区画への土砂投入に踏み切るかどうかは明言を避けた。辺野古を巡る問題の方針決定には、これまで官邸の意向が大きく影響してきただけに、防衛省関係者は「予定通りになるかは断言できない」と語った。
 (山口哲人、當山幸都)