全家庭相談員が非正規 55年前の国通知根拠 虐待対応へ人材確保課題 沖縄県内市町村本紙調査


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄県内11市で児童虐待や育児など住民からの相談を受ける家庭相談員42人が、全て非正規の嘱託職員であることが23日までに琉球新報の調べで明らかになった。町村で本紙が確認できた同様の専任相談員は5町3村の13人で、全員非正規の嘱託職員だった。相談員探しに苦労している自治体も多く、3市で欠員が出ている。各自治体は非正規の根拠に1964年の厚生省児童局(当時)の通知を挙げる。児童虐待の相談が急増する中、識者は「児童虐待に携わる業務が非常勤で成り立っている現状で、時代にそぐわない」と指摘している。

 琉球新報社は、千葉県野田市立小4年女児(10)が自宅で死亡した事件を受け、県内41市町村の相談業務の実態をアンケートと電話取材で調べた。渡名喜村を除く40市町村から回答を得た。

 非正規採用の根拠となっている64年の厚生省児童局長通知「家庭児童相談室の設置運営について」は、家庭相談員の身分を「非常勤の特別職」と明記する。また児童虐待の対応では、非常勤職員の人件費のみが国庫補助対象となることを一因に挙げる自治体もあった。

 2019年3月現在の11市の相談員の定員は46人。3市では産休や病休で4人が欠員だった。1市は新年度の相談員1人が決まっていない。

 町村の相談業務は自治体で異なり、女性相談を含む相談業務の専任は5町3村の13人。自治体と関係機関が連携し虐待を受けた児童への支援を図る「要保護児童対策地域協議会」を兼務しながら、相談に当たる嘱託職員も多い。1町では兼務の嘱託相談員が4月以降、未定だった。

 本島北部や離島では福祉の担当職員や保健師らが相談を受けているが、県は「一口に『相談員』でくくれない」と全体を把握していない。

 条件に社会福祉士などの資格を義務付けている自治体もある。1年契約で、最大3年しか更新できない自治体もある。期限に上限がなくても「他で正職が決まれば辞めてしまう」と経験が蓄積されない現状だ。

 一方、正職員は自治体によって相談に同席する職員もいるが、多くの自治体で困難なケースや時間外の緊急対応、相談員への助言や業務管理に当たっている。(豊浜由紀子、新垣梨沙)