少年らと地域つなぐ「琉宵会」 キックボクシングを教える金城さんら「見てくれていると思うだけで変わる」と見回り活動


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ごみ袋とチリばさみを持って地域の見回りを続ける金城隆也さん(後列右端)と「琉宵会」のメンバーら=豊見城市宜保

 【豊見城】毎週水曜の夜、沖縄県豊見城市の市立中央公民館で10~20代の少年たちに総合格闘技とキックボクシングを教えているのは、市体育協会職員の金城隆也さん(28)だ。「やんちゃだった」という10代の頃、周囲の大人に救われた経験から、少年と大人が関わる場の必要性を痛感し、約6年前に地域で格闘技を教え始めた。2017年に「琉宵会(りうせうかい)」として公民館に団体登録。地域の見回りにも精力的に取り組み続け、今では地域に欠かせない存在になっている。

 現在「琉宵会」に参加するのは約50人。キックボクシングを習う人もいれば、仲間としゃべって帰る人もいる。強制はしない。

 見回り活動は、地域と関わり地域の役に立つことをしようと始めた。週に3回、豊見城団地周辺や豊見城中学校周辺をごみ袋を手に歩く。南部農林高校1年の渡嘉敷唯吏(ゆうじ)さん(16)は「友達と会えるのが楽しいし隆也さんが優しいから」と話す。

 10代の頃、金城さんは夜遊びをし、明け方にパトカーに送ってもらって家に帰ることもあった。そんな時「あんた、また遊んでたわけ。もう」と怒ってくれたのが、近所のおばちゃんたちだった。「自分のことを見て心配してくれる人がいる。それがやっぱりうれしかった」。この経験が活動の原点となった。

 高校進学後、格闘家の當山馨さん(40)からキックボクシングを教わり、23歳ごろまでアマチュア選手として活躍した。「僕がしてもらったことをしているだけ」と語る。

 ある時「俺なんか何しても誰にも声を掛けられない。死んだ方がいい」とつぶやいた少年がいた。見回りをしながら金城さんは、この少年に声を掛けてほしいと地域に伝え続けた。

 「ウーマクーでもいい。でも地域と遠ざかってしまうとどんどん悪い方向に行ってしまう。地域が見てくれていると思うだけで変わる」。今、その少年の口から、あの言葉は出てこない。

 会では、野球部も結成。豊見城署員や地域の少年補導員と試合をすることも。どの活動も、地域とつながりをつくるきっかけだ。

 琉宵会は6月に「NPO法人あきづ」に法人化する。あきづはトンボの別名で、真っすぐ前に飛ぶトンボのように前向きに生きてほしいとの願いが込められる。2月には、豊見城小学校で児童から見回りに対する感謝状が贈られた。金城さんは「もっと多くの人に、この子たちのことを知ってもらいたい。本当にいい子たちなんです」と、満面の笑みを浮かべた。
 (半嶺わかな)