〈衆院3区補選 攻防〉上 屋良朝博陣営 名護市長選再現を警戒 小沢氏「圧倒的大勝で」


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屋良朝博氏(右)の女性集会であいさつする玉城デニー知事=3月28日、沖縄市農民研修センター

 「圧倒的な大差で勝たないと意味がない」。衆院沖縄3区補選の告示まで残りわずかとなった5日、自由党の小沢一郎代表は各市町村を回り、屋良陣営幹部にげきを飛ばした。小沢氏が3区補選の応援で沖縄入りするのは3度目で、陣営の引き締めに駆け回った。陣営幹部は「小沢代表の危機感の表れで、選挙への本気度をわれわれに見せるためでもある」と明かす。

 小沢氏の行動の背景には沖縄での組織力の弱さがある。屋良朝博氏を擁立した自由党はこれまで、衆院議員だった玉城デニー氏が県連代表として組織をまとめてきた。だが知事就任に伴い玉城氏が党を離れ、その衆院議席の継承を懸けた補選の仕切りが課題となる。

 実際、今回の3区補選では、玉城知事と近い県議会与党会派・おきなわのメンバーらが選対幹部として名を連ねた。関係者は「玉城知事はこれまで風任せな選挙をしてきた部分もあり、選挙態勢は盤石とはいえない」と指摘する。

 2017年10月の前回衆院選では、玉城氏が自民公認候補に約1万9千票差をつけて当選。翁長雄志前知事が構築した「オール沖縄」候補として勢いに乗った勝利だった。

 今回、屋良氏も玉城知事の後継として「オール沖縄」候補を掲げる。昨年9月の県知事選や前回衆院選における枠組みを踏襲して無所属候補での出馬を予定し、辺野古新基地建設阻止を公約の柱に据える。米軍基地が隣接する北谷町で生まれ育ち、新聞記者として基地問題をライフワークにしてきた屋良氏は、普天間飛行場の機能移転による危険性除去を訴える。

 今回の補選は昨年の県知事選後、最初の国政選挙となる。就任から半年が経過した玉城県政への評価が問われる側面を持ち、結果は今後の県政運営にも影響する。3月28日に沖縄市内で開いた女性集会には玉城知事も駆け付け「民意があるから私は堂々と主張できる。県民投票でも民意は示された。屋良さんを国会に送り出そう」と訴えた。

 一方、陣営内には「名護市長選のような楽観ムードが漂い、知事自身も公務を理由に屋良氏の応援にあまり入らない」と、辺野古新基地反対の現職が敗北した名護市長選の再現を警戒する声もささやかれる。陣営幹部によると、玉城氏は今月中旬から下旬にかけて知事公務で訪中し、北京や福建省などで中国政府首脳との面談や文化交流を予定していた。だが、選挙戦最終盤の“三日攻防”に不在であることを知った陣営幹部らの要望により、訪中の予定を前倒しし、三日攻防に間に合わせて帰国することとなったという。

 陣営幹部は「知事の後継である屋良さんが落選したら目も当てられない。負ければ、知事選、県民投票で示された新基地反対の民意を否定することになる」と厳しい表情で語った。

 (’19衆院3区補選取材班)

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 21日投開票の衆院沖縄3区補欠選挙が、9日に告示される。一騎打ちが見込まれるフリージャーナリストの屋良朝博氏(56)=無所属=と、元沖縄北方担当相の島尻安伊子氏(54)=自民公認、公明推薦=の告示前の動きを追う。