〈衆院3区補選 攻防〉下 島尻安伊子陣営 真価問われる「自公維」 菅氏 支援固めに注力


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島尻安伊子氏(右)の女性部集会であいさつする金城勉県議=4月1日、沖縄市民会館

 「何としても島尻さんを勝たせよう。皆さんの力を貸していただきたい」。3月24日、沖縄入りした菅義偉官房長官は、沖縄市の選対事務所で市町村長や議員、企業人らと相次いで面談し、自民公認の島尻安伊子氏への支援を訴えた。官邸との「信頼関係がある」(自民県連幹部)島尻氏を擁立し、3区奪還に意欲を燃やす自民だが、従来の戦い方から変化が起きている。

 島尻氏の支援を呼び掛けた菅氏は、街頭に立つことはなく選対内での意見交換など身内の支援固めに力を入れた。党本部関係者によると、昨年9月の県知事選とは対照的に県外の国会議員に沖縄入りを求める号令は掛かっていない。

 知事選は全国から国会議員が集まり、業界をくまなく回る戦略を展開したが、連日訪れる国会議員に対し企業側からは「何度来るのか」と反発も出た。選対スタッフも応援議員の付き添いなどに時間を割かれ、選挙戦に悪影響を及ぼした要因とも目される。国会議員の一人は「知事選の反省を生かしている」と語った。

 ただ、今回の補選は、知事選と同じく自民、公明、維新の「自公維」態勢で臨む。とりわけ公明にとっては夏の参院選で九州沖縄比例から候補者を擁立していることもあり、「補選で勝ち、弾みを付ける」(県本幹部)として、地方議員を総動員した選挙戦を展開する。

 4月1日、島尻氏の女性部集会に登壇した金城勉県本代表は「『オール沖縄』から国会議員を送っても県民生活の向上につながらない」と批判し議席奪取の必要性を訴えた。

 4人の子どもを育ててきた経験から、子どもの貧困問題への対応が政治家としての「原点」とする島尻氏は、公約の柱に子どもの貧困対策を掲げる。

 県が3月末に発表した県民意識調査では、県が重点的に取り組むべき施策として基地問題への対応を抑え「子どもの貧困対策の推進」が1位だったこともあり、陣営の関係者は「我々の訴えは間違っていなかった」と自信を見せる。

 一方、重要争点である米軍普天間飛行場の辺野古移設については「容認」を打ち出す。自民県連も組織としては島尻氏と同様に容認の立場だが、昨年の知事選などの大型選挙では容認を前面に出さない戦略を取ってきた。

 だが知事選の総括で“辺野古隠し”の戦略は「失敗だった」と分析したこともあり、県連内の方針も、いち早く辺野古容認の立場を明確にしてきた島尻氏の姿勢と合致させた。

 選対本部長を務める桑江朝千夫沖縄市長はこうした島尻氏の姿勢について「これまでの選挙と違って有権者にとっても分かりやすい。大事なのは早期の普天間の危険性除去だ」と強調した。さらに普天間の県内移設に反対する公明との連携態勢についても「影響がない」と強調し「自公維」態勢が機能することに自信をのぞかせた。

 (’19衆院3区補選取材班)