政治

事件防げた可能性 沖縄・北谷女性殺害 米軍の行動制限が形骸化

 沖縄県北谷町桑江で発生した日本人女性殺人事件で、女性の殺害後に自殺した在沖米海兵隊所属の米海軍3等兵曹ガブリエル・オリベーロ容疑者(32)は名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに居住していた。オリベーロ容疑者は事件発生前、米軍から被害女性に近づくことを禁止する命令「MPO(ミリタリー・プロテクティブ・オーダー)」を受けていたが、関係者によるとオリベーロ容疑者は基地司令官から外泊許可を得て、12日夜に被害者宅へ向かったという。接近禁止命令が出されていた中、米軍が外泊許可を与えていなければ事件は防げた可能性がある。

 2016年時点でのリバティー制度では(1)午前0~5時には基地外にある公共の場での飲酒を全面禁止(2)「E―5(軍曹)」級以下の軍人は午前1~5時の外出を禁止(3)基地ゲート前での抜き打ち飲酒検査―などを定めていた。

 これに基づくとオリベーロ容疑者の階級は午前1~5時の間で外出禁止対象となる。だが今回の事件では、米軍がオリベーロ容疑者にDVの訴えがあったにもかかわらず外泊許可を認め、基地外への外出を許した。



 米海兵隊はこれまでの取材に対し、今年1月に被害女性から憲兵隊へ「同容疑者に『性的暴行』を受けた」との相談があったと説明している。県警も憲兵隊からの情報提供を受けて人身安全関連事案の対象者として認定し、事情を聴くなどしていた。

 米軍は今年2月26日からリバティー制度を大幅に緩和しており、本紙は米軍に同制度の内容や、接近禁止命令が出ていたにもかかわらず被害女性と接触できた理由などについて質問したが、17日までに回答はない。米軍の憲兵隊が女性からの被害申告や事案の重要性を適正に把握しておらず、オリベーロ容疑者に外泊許可を与えた可能性があり、米兵の行動制限は形骸化しているのが現状だ。

 沖縄防衛局は制度について「第3海兵遠征軍司令官のスミス中将が説明している動画が海兵隊のホームページにて公開されているものと承知している」と述べた。また「米側からは公務時間外行動規則(リバティー・オーダー)は内部規定であり、(情報を)提供できないと説明があった」とした。

◆識者談話◆接近禁止後 監督厳重に ウーマンズプライド代表・ミス美咲氏

 MPOは事件に発展するのを防ぐための措置で、上司が兵士に命じ、命じられた本人は書類にサインする。当事者に近寄ることを禁止するのは事件が起きないようにするためで、それが一番重要だ。それにもかかわらず、海兵隊が女性を殺害した海軍兵に外泊許可を出したのはもってのほかで、びっくりしている。

 今回の事件では、MPOとは別にキャンプ・シュワブ内で容疑者が行動制限されていた可能性もあるが、もしそうだったとしたら、なおさら外泊許可はあり得ない対応だ。たとえ行動制限されていなくても、DVなどの訴えがある兵士が被害者に近づく恐れがある外泊許可は問題だ。

 MPOは特定の当事者に近寄らないよう命じる処分で、外出を制限するものではなく、上司が24時間監視するようなことはない。DV事案は被害者がたとえ「大丈夫だ」と話しても、大丈夫ではない場合が多い。同様の事件の再発を防ぐために、米軍はMPOを出した兵士に対し、カウンセリングや監督を厳重にすべきだ。(談)


MPO(ミリタリー・プロテクティブ・オーダー)
 部隊指揮官が家庭内暴力や児童虐待から被害者を守るため部下の米軍人に出す命令。米軍人は保護すべき人と(直接や第三者を介しても含め)一切の接触と通信が制限される。通信は面談、電話、手紙、ファクシミリ、メールなど。被害者と保つべき距離を上官が定め、それ以上近づくことを禁じる。発令中は武器を保持できず個人所有の武器の処分も定める。外出禁止などは含まない。部隊が変わると無効。