沖縄の建造物は県外の10倍さびやすい…塩分含む強風が影響か 琉大下里教授が県外と比較 


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 架橋や横断歩道橋など県内の公的建造物(インフラ)が塩分によってさびる速度は、県外の太平洋沿岸部の約10倍、島根県や新潟県など日本海側沿岸部の約5倍に上ることが分かった。琉球大の下里哲弘教授が沖縄総合事務局でこのほど開催された「インフラメンテナンス 国民会議 沖縄フォーラム」で調査結果を報告した。下里教授は「インフラは必ず劣化する。劣化することが分かっているのに予算や人手の不足を理由に放置しておくと、大事故につながる」と警鐘を鳴らしている。

 修繕に予算確保課題

 県が2016年に策定した「県公共施設等総合管理計画」の試算によると、県が現在管理している建造物の半数以上が、35年度には築後50年を経過する。現在ある公共施設の数量や規模を維持する場合の修繕・更新費用は65年度までの50年間で約3兆8828億円、年間に換算すると平均約776億円必要になると試算しており、予算の確保も課題となる。

 沖縄は年間を通して塩分を多く含む強い風が吹くことに加え、高温多湿な気候から「日本一過酷な塩害環境」といわれる。塩分は鉄筋のさびる速度を速めるため、塩分を多く含む風が吹いている沖縄の建造物がさびる速度は、県外の速度を大きく上回る。

 下里教授の報告によると、大阪府や福岡県などと比べ、沖縄の1日当たりの塩分平均飛来量は約6倍、台風通過時の塩分飛来量は約24倍に上るという。琉球大が設置している実験施設の数値によると、国頭村の辺野喜では、本土で10年かかる劣化状態に約1年で達する。

 建造物を支える鉄筋は、さびると膨張してコンクリートに亀裂が入り、剝がれ落ちる。塩分がさびる速度を速めるため、全国でも突出して風に含まれる塩分量が多い沖縄は、建造物の一般的な耐用年数に達しない場合でも劣化が著しく、崩落などの事故につながる危険性が高い。

 現在、沖縄特有の塩害環境へ対応するための技術開発が進められており、伊良部大橋などに利用されている。一方で、長年にわたって塩害の影響を受けているとみられる、築後数十年が経過している公的建造物への対応も必要だ。

 岐阜県や長崎県では、自治体職員だけでなく、市民も一緒になって公的建造物を点検する取り組みが始まっている。下里教授は「日頃からインフラを利用している市民も、通勤時などに橋や道路を意識すれば、日常点検の代わりになる。産学官民が連携することで塩害に対応した技術開発とともに、長期にわたるインフラの維持管理が可能になる」と指摘した。 (嶋岡すみれ)