景気拡大で雇用改善 求人不足の失業率低下 NIAC調査


この記事を書いた人 大森 茂夫

 南西地域産業活性化センター(NIAC、石嶺伝一郎会長)は8日、沖縄の労働市場に関する調査分析結果を発表した。県内景気の拡大で沖縄の雇用情勢は大きく改善し、企業の求人不足が原因となる「需要不足失業率」は大幅に低下している。高卒者や大卒者のほか、女性や高齢者の就業も増えている。NIACは「人手不足が深刻化し、高失業率時代の政策目標だった『雇用の確保』は『労働力の確保』の問題に切り替わった」と指摘する。

 完全失業率から雇用のミスマッチによって起きる「構造的失業率」を差し引いて算出する需要不足失業率は、リーマン・ショック直後の2009年に4%台の水準にあったが、10年以降は低下傾向となった。15年には1%を下回り、18年10~12月にはマイナス0・18%まで低下した。NIACは「需要不足失業率は既に解消されている」と分析する。

 年齢別の完全失業率は、15~19歳は10年の22・2%から18年に8・3%まで下がった。20~24歳は10年の15%から18年は6%となった。景気拡大に伴って求人数も増加し、高卒者や大卒者の就職率が高まっているとみられている。男女や年齢別で見ると、男性の60~69歳のほか、女性の20~69歳で労働力人口の割合も上昇している。NIACは「人手不足で高齢者の求人が増加したことや、女性が社会参加することへの意識の高まりが背景にある」と指摘する。

 求職理由別の完全失業者数は「自己都合(自発的な離職)」は10年の1万9千人から18年は1万2千人に、「勤め先や事業の都合(非自発的な離職)」は10年の1万4千人から18年は3千人まで激減した。企業の労働条件改善などが進み就業者の定着率が高まったほか、倒産数の減少が影響した可能性が高いという。

 NIACは今後の見通しについて「女性の社会進出や雇用環境の改善が進み、高齢者でも働く意欲がある人の割合が高いことから、労働環境の整備を進めれば労働市場への参入を増やせる余地はある。求職者が専門性を高め、企業が職務内容に見合った処遇で雇用することなどで、ミスマッチを改善する必要もある」としている。