社会

沖縄県内の経験者が語る裁判員裁判 「間違えたら大変」量刑に戸惑い、今も悩む... 裁判員制度10年

人を裁いた負担の重さを吐露し「裁判員に量刑判断させる必要はないと思う」と話す女性=17日、沖縄本島南部

 21日で施行から丸10年となった裁判員制度。沖縄県内でも那覇地裁で対象事件の公判が開かれ、県民の多くが裁判員を経験した。本紙の取材に応じた裁判員経験者の2人は「貴重な経験になった」と話す一方で、人を裁く責任の重さに「負担を感じた」と声をそろえた。一方で量刑判断を求められたことに「必要ない」「難しかった」と戸惑いもあった。事件が起きた背景や側面に「考えさせられることがあった」とし、社会が抱える課題に気付かされたと経験を語った。(謝花史哲)

 軽度の知的障がいを抱えた20歳の弟が兄を殺害した事件。専門家は事件の背景の一つに被告の過去に触れ「障がいを踏まえた適切な配慮がなかった」ことを挙げた。判決は検察側の求刑懲役14年に対し懲役10年。公判で裁判員を務めた本島南部の50代女性は「殺人は重罪。でも被告の複雑な状況を考えると、あの量刑で正しかったのかと思う」と判決から半年が過ぎた今も苦悩している。

 被告は4人きょうだいの末っ子。両親は離婚し母が家を出て行った。職業訓練校ではいじめを受け、引きこもりになった。精神鑑定した医師は「問題への対処方法を考える能力がやや劣る」としたが、善悪の判断はできたと説明した。それでも障がいのない子と同じように見ることはできず「障がいであることがとても引っかかった」。

 量刑判断では類似事件の量刑を調べる最高裁の「量刑検索システム」が使われ、そこから裁判官は最下限は10年と説明した。女性は娘2人を生んだ自身の子育てと重ね「母親はどうして家を出たのか。社会は被告に手を差し伸べられなかったのか」とすぐには決められず、判断を提示したのは裁判員の中で最後になってしまった。

 事件について女性は「社会のサポートがあれば起こらなかったかもしれない」と振り返る。被告の育った環境や刑期を終えた後のケアなどを考えると「犯罪に対する意見は言えるが、行為だけで量刑を決めるのは責任が重い。そこは裁判官だけでやってほしい」と要望した。

 宜野湾市の会社員、座間味和哉さん(37)は約600キロの覚醒剤をボートに隠して密輸したとして起訴された台湾人の男の事件を担当した。男は主犯格とされたが、覚醒剤を積み込んだことなど犯罪を真っ向から否認した。座間味さんは「判断を間違えたら大変だ」と重圧を感じ「『疑わしきは罰せず』をとても意識した」と振り返る。

 事件は国内史上最高量の覚醒剤密輸事件として友人たちも知っていた。座間味さんも「まさかこんな事件が沖縄で起きているなんて」と驚きを隠せなかった。

 主犯格の男が全て否認し真偽の見極めが難しい中で、目を向けたのがボートに同乗していた別の男2人の供述だった。2人は海上で別の船から覚醒剤が隠された荷物を搬入し船底に収納したことを証言。「2人の供述は一致している。600キロもの荷物。被告人だけが積み込んだことを分からないというのは不自然だ」と感じた。

 自身の仕事の経験も判断に生かした。20代で防災設備関係の会社に入社し関係資格を取得。仕事柄梱包(こんぽう)品も多く取り扱ってきた。その経験から「あれだけの荷物をボート所有者が知らず、中身も確認しないのは有り得ない。うそをついている」と判断した。ただ、覚醒剤はボートの中にあったことから密輸を遂げたかどうかも争われ「量刑を決める上でとても難しかった」と話した。

 裁判員を経験して知ることになった密輸の現状。「もし密輸が成功していたらと思うと怖い。どうにか防ぐ手だてはなかったのか。取り締まりの在り方に課題があるとも感じた」と指摘した。