くらし

家族は「留守番ありがとう」と言えるくらい余裕を持って 回復、本人のペースで 引きこもりを考える(上)

「本人、家族もエネルギーを回復させて」と話す県立総合精神保健福祉センターの宮川治所長=6日、南風原町の同センター

 川崎市で児童らを殺傷した容疑者に引きこもり傾向があったと報じられ、東京都では引きこもる息子を父親が刺して死なせた。引きこもりを危険視したり突き放したりする言説も飛び交う中、心痛める家族からの相談が全国的に増えているという。引きこもりとは何か、苦しむ本人や家族に地域ができることは何か、関係者のインタビューを連載する。初回は「家族は『留守番ありがとう』と言えるくらい余裕を持って」と話す、精神科医で県立総合精神保健福祉センター(南風原町)の宮川治所長。
 (聞き手・黒田華、次回は18日)

 ―引きこもりとは。

 「仕事や学校に行かずに自宅に引きこもり、人とのつながりがない状態が半年以上続くことで、病気ではない。きっかけは人それぞれだが、安心・安全な環境でしっかり休むと、エネルギーが回復して外に出られるようになる。子どもが引きこもると家族は本当に心配になるが、回復は可能だ。本人のペースでのんびり過ごさせてあげて」

 ―引きこもる原因は。

 「大きく三つに分けられる。一つは社会人になってパワハラやセクハラを受けて外に出られなくなる。一つは小中学校でいじめを受けて不登校になり、そのまま引きこもる。もう一つは精神疾患がある場合で、これは治療が必要だ。前の二つを引きこもりと呼び、エネルギーを取り戻せば改善するが、いじめやパワハラなどで強いダメージを受けた人は対人恐怖、集団恐怖が残り、長期化することがある。その分、安全・安心な環境が必要だ。発達障がいで人間関係に困難が生じるケースもある」


 ―引きこもる本人と家族はどのような状態か。

 「本人は外で傷つき、社会とのつながりを絶って家にこもる。家族とは出掛けたり食事をしたりするが、強く叱咤(しった)激励すると、家族とのつながりも絶って自室にこもってしまう。家族がそれを他者に相談できなければ、家族も社会から孤立してしまう。この状態はとても安定的で、周囲の誰にも知られないまま10年20年と続き、高齢化した親の生活介助で自宅に入ったスタッフが、中年になった引きこもりの子どもを見つけて驚く事例もある」

 「本人は仕事や学校に行かなければと思いつつ、できずに苦しんでいる。『早く働け』など、本人にとって一番痛いところを指摘され続けるとストレスが蓄積し、家族への暴力として爆発する。だが、基本的には人に害を加えるような人ではない」

 ―家族はどう対応すればいいか。

 「『遊んでいる場合ではない』などと趣味や遊びを制限せず、子どものことをいったん頭から外して自分の生活を楽しんでほしい。親が元気になれば、余裕を持って子どもに接せられるようになる。返事がなくても『おはよう』『おやすみ』『出掛けてくるね』と声を掛け、帰宅時に『留守番ありがとう』と言えるくらい余裕を持ってほしい。何とかしなければと焦るより、おおらかに子どもを受容し、外の人に話せるようになれば大きな進歩だ。改善する方法はある。家族だけで解決しようとせず相談してほしい」

 ―相談を受ける人に重要なことは。

 「『本人を連れて来て』と求めたり『○○の窓口に行って』と丸投げしたりしてはいけない。本人が相談に来られるなら家族は悩まない。そのような対応では、困り果て疲れ果てて、どうしようもなくなって相談した家族は二度と話さなくなるだろう。聞き取りをしたらその情報を持って、家族と一緒に専門機関を訪問してほしい。一度きりの機会を大切にしてほしい」

<用語>引きこもり

 引きこもりとは、病気ではない人がおおむね6カ月以上、仕事や通学、趣味などの社会参加をせず、外出しても人間関係がない状態を指す。内閣府の調査では国内に100万人以上と推計され、うち40~64歳が6割を占める。別の調査では「人口の3%」との結果もあり、実際にはもっと多いと考えられる。

 県内では県ひきこもり専門支援センターが県立総合精神保健福祉センター(南風原町)に開所し、電話や面談で相談を受けている。17年度には当事者180人について本人や家族、関係機関などから1068件の電話相談があった。

 本島内では少なくとも6カ所で家族会の集まりが定期的に開かれている。県のひきこもり専門支援センターは(電話)098(888)1455。祝日などを除く月~金の午前10~12時、午後1~4時。