【記者解説】ガイドライン改定の実効性は…


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 日米地位協定に基づく米軍機事故に関する「ガイドライン(指針)」が改定され、日本側の現場周辺への迅速な立ち入りが明記された。ただ立ち入りに日米相互の同意が必要になるのはこれまで通りで、実効性は不透明だ。加えて、日本側による米軍財産の捜索、差し押さえに米側の同意を必要とする現行の地位協定の運用を覆す内容とはなり得ず、依然として日本側の捜査に高い壁が立ちはだかっている。

 事故発生時の米軍による現場封鎖はたびたび問題化してきたが、今回の改定に大きく影響したのは、2017年10月の東村高江の牧草地での米軍CH53ヘリ不時着炎上事故だ。日本側が現場に立ち入れたのは事故発生から6日後だった。当時米軍は機体の他、周辺の土壌も持ち去ったため、日本側が捜査を尽くせず反発が高まった。

 今回の改定で事故現場周辺の内周規制線内への「迅速かつ早期の立ち入り」が約束されたが、立ち入りにはこれまで同様に日米相互の同意が必要とされた。

 米軍側はこれまで、この規定を根拠に日本側の内周規制線内への立ち入りを認めず、排他的に現場を管理してきた実態がある。

 日本側が迅速に現場に立ち入れたとしても、米軍財産である事故機を直接調査できるかどうかは「別の話」(外務省)だ。

 事故が発生する都度、県などは日米地位協定の改定を再三求めてきたが、今回も指針改定という「運用改善」となり、程遠い対応となった。

 運用改善によって本体の地位協定の内容を覆すことはできず、「治外法権」とも指摘されてきた状況の抜本的改善につながるかは見通せない。
 (當山幸都)