頭脳勝負 犠打三つの奥原海斗


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 第101回全国高校野球選手権大会第4日は9日、1回戦4試合を行い、第3試合に登場した県代表の沖縄尚学は春の選抜準優勝の習志野(千葉)に4―5で競り負けた。

 同点の六回裏、1死満塁。左打席に6番奥原海斗が立った。球を見極め、ファウルで粘ってフルカウント。6球目、比嘉公也監督のサインが5球目までのヒッティングから、スクイズに変わった。相手の意表を突くサイン。しかし奥原に動揺はなかった。「ずっと練習してきた。(自分なら)決められる」

 140キロ台中盤の快速球を放る相手エースの飯塚脩人が投げた直球は、外角高めへ。バットを構えた位置から離れていったが、腰を低く落とし、下半身を柔軟に使った奥原の目線は球から離れず、球の勢いをうまくいなした。三塁線と並行に転がるボール。無警戒だった三塁手は出足が遅れ、三走の島袋皓平が悠々とホームイン。接戦から抜け出す頭脳プレーに、3万9千人が詰め掛けた客席は「うおー」とどよめき、大きな拍手に包まれた。

 出塁率の高いクリーンアップの後を担い、好機を広げるため、犠打に強いこだわりを持つ奥原。「バントは一発勝負。練習の時から、失敗したら交代と思って取り組んできた」。大会地入りしてからも飯塚投手の速球を想定して練習を重ね、自信を深めてきた。

 四回にも勝ち越しスクイズを決め、この試合だけで犠打は三つ。「派手なプレーではなく、やってきたことをやる」。大会前、淡々と語っていた仕事人が、大舞台でまばゆい輝きを放った。 (長嶺真輝)